混迷∞青年記@ 第一章〜第六章

□第一章第四話
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翌朝

空達は学校に通っているので彼らの朝食に合わせて俺も朝食をとらせてもらった
…カード無くてご馳走になるしかなかっただけだがな…


『あ、そうだ空。あの部屋掃除するからな』

『えー…きれいにしちゃうの?』

『少なくとも床に散らかってるゴミとかは処分するぞ』

『…はーい』

『あ、じゃあ俺はもう行くから。じゃあね』

『いってらっしゃい』

『いってらっしゃーい』


灰色ブレザーの制服に身を包んだ嵩海は本当に普通の高校生にしか見えない


『あれでも受験生だから忙しいんだよ』

『大学か…夢があるな』

『二十歳の夢は何だったの?』

『ん?』


夢か…
昨日あっさり壊されたんだけど


『大学今年出たって言ってたじゃん、就職活動してたんでしょ?
ここに来ることになっちゃったけど…それまでは何目指してたの?』

『そうだな…ホテルマン目指してたんだよ』

『ホテルマン…?あのホテルのフロントとかに居る人?』

『彼らもそうだけどな、中でも色々種類があって…
例えばベルスタッフとかハウスキーパーなんかもホテルマンだ』

『へぇー…いまいちピンとこないんだけどさ、それになる為には何が必要なの?』

 
さっきから質問攻めだな
でも夢の話をしていると気が楽になる

そうだ
借金がもし無事返せたなら…またチャンスはきっとある


『特にこれといって必要な資格はないさ。でもやっぱり1番重視されるのは人柄だな』

『人柄を大学で学ぶの?』

『そうだな…人間関係について学ぶには学校はいいところだと思う。
大学は文学部で色々他の人の意見を聞く機会も多かったしな』

『ふーん…』

『あとは…個人で英検受けたりホテル実務技能認定試験っての受けたりすると就職に有利になる…くらい』

『…英検何級?』

『準一』

『……今度教えてよ、俺全然だめなんだよ英語…』


そういえば…こいつ嵩海のこと受験生だから忙しいとか言ってたが…


『お前も受験生じゃないか』

『…そう、でも何になるかとか全然決めてないからとりあえず兄貴の高校目指してるんだよ』

『なるほどな。応援するよ』

『ありがとー…おっと?俺もそろそろ行かなくちゃ!またね〜』

『あぁ、いってらっしゃい』


1人残った俺は黙々と食事を続ける

何になりたいかわからない
まだ中学生だ、それでいいのだと思う
高校に入ってからで充分だ
それにまだ4月
受験にだって1年本気でかかれば…どこだって希望はあるだろう

この後ここの仕事の話を聞きに事務に行く

夢であるホテルマンだってまだ完全に諦めたわけじゃない
幸いまだ若いといわれる歳だ

希望は…捨てない
ただ今は、腹をくくるしかなさそうだ


俺は空になったトレーを返し、1回部屋に戻ってから事務へと出向いた
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