混迷∞青年記A 第七章〜

□第八章第三話
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元バイト先に行ってから早くも1週間
外ではセミがミンミン鳴いていて
部屋も冷房をつけないとやっていけないくらいだ
そんな夏も真っ盛りなのだから昼間くらい外に遊びに行けばいいのに
俺の周りの学生達といえば…


『暑いよー…外でたくないよ、ね?光一兄』

『空に同じく…部屋でのんびりしてた方がいい…』

『俺も暑い外はごめんだぜ』


揃いも揃ってインドア派
ただ1人彼を除いて、だけど


『そんなで怠けてないでさ!体動かそうよ!汗ながそうよー!』

『嵩海の言う通りだ。そんなんじゃ腐るぞ』


嵩海は先日、ついにインターハイへ出場した
残念ながら優勝することはできなかったが、それでも好成績を残し悔いのない試合に出来たのだとか
そんなわけで忙しかった部活もひと段落し、最近は寮にいるけれど
今までずっと体を動かしていたから何もしないという事が落ち着かないらしく
連日皆を連れて何処かに遊びに行こうと声を掛けているが…
奴等の腰は重かった


『だってここら辺で遊べる場所ないじゃん?
どうせ室内で遊ぶんならここにいた方がマシだし…』


そういう空の意見も、ここは都会でビルや室内施設ばかりなので
もっともではあるんだが…


『じゃあプールでも行くか?今度はみんなでさ』

『えー…この前行ったからいいよ…』


なんだと生意気な…
この前は今度は皆で来たいな、とか言ってたじゃないか!

と、空は反対したけれど
それに反応したのは春原だった


『プールかあ…確かに泳ぎたい気もするな』

『やめときなよー、どうせ人いっぱいで遊べないよ?』

『そんなのどこ行っても同じだぜ?』


うーん…
駄々をこねる空を置いて行くって手もあるが、それはきっと嵩海が許さないだろう
空も賛成しそうで、なおかつ皆が楽しめそうなところか…


『…海とか?』

『え?』


俺の海というひと言に、この場の全員が反応した


『それだ!それだよ二十歳!ナイスアイディア!』

『確かに海ならプールほど混雑はしてなさそうだな』


空と春原なんかは早速スケジュール空きがないか確認を始め、何処の海にしようかなど
備え付けのパソコンを起動させて検索始めた
けれど、ここで意外にも嵩海が顔を渋らせた


『嵩海は嫌か?海』

『えっ?い、嫌じゃないけどさ…
ほら、晃史なんかはこの前まで臨海学校で海行ってたでしょ?
だから皆で行くとしたらどうかなー…って』


ああ…それは確かに
けれど、龍崎に視線を移すと龍崎は


『別に構わねぇよ。どうせ泳ぐんなら海の方が自由に泳げんだろ』

と、そうぶっきらぼうに言いつつも
のそのそと春原と空に混じってパソコンの画面を覗き込みに行った
それを受けて嵩海はうー…と悩んだ後、ハッと何かを思いついたように言った


『移動とか大変なんじゃないかな?泊まりになるなら荷物も多いだろうし』

『ああ、移動だったら俺が車運転できるからさ。ちょっと金掛かるけど車借りれば大丈夫だと思う』


なるほど、やっぱ色々考えてくれてるんだな嵩海は
まぁここ数ヶ月全然運転してないから腕は訛ってるかしれないが
それでも免許取立ての人よりかはうまく運転できるはず


『だから移動は俺に任せろ』

『さっすが北倉!それに大人がいれば宿にも問題なく泊まれるしな』

『……うん、そうだね。それなら安心だね…』


こうして皆で海に行くことが決まり、それに向けての準備が始まった
皆そのプランを練るのに熱中していたけれど、嵩海だけはどこかぎこちなく空をチラチラと見ていた…
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