混迷∞青年記@ 第一章〜第六章

□第一章第二話
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部屋の中を確認してみると、もう1人の荷物があちらこちらに散乱していた

風呂場には湯が張りっぱなし
衣類は脱ぎっぱなし
おかしの袋もゴミ箱ではなく床に落ちている

決して綺麗好きってわけではないが…流石にどうしたものか
ただそれを本人の許可なく片付けるのはどうかと思ったのでとりあえず空いている方のデスクの周りに荷物を置く

そのもう1人はというと上の方のベッドで寝ているらしい
もぞもぞとたまに動いては欠伸が聞こえた

起きたら挨拶しよう


数少ない荷物を出して整理する
持ってきたのは衣類、洗面具、筆記用具、携帯
修学旅行に行くような荷物だが
そんな平和な意味はこめられていない


『…』


詳しい仕事の説明は明日されるらしい
実際に働くのは3日後からだとか

親父に連絡を取ろうかと思ったがまだ落ち着けていない頃にかけても取り乱すだけだろうと
そう判断し明日かけることにした


『…俺が動揺してるだけか』

『さっきっから独り言がうるさいんですけど…何?新入り?』


ふと振り返ると上のベッドからひょっこり顔を出す青年が

…。
……。
………青年?


『あーあ…せっかく気持ちよく寝てたのに、さ』


その顔にはまだかなり幼げが残っている…
まだ少年といえる年齢だろう


『…起こしてわるかったな、俺は北倉 二十歳(キタクラ ハタチ)。今日から世話になるからよろしくな』


自分としてはやわらかく接したはずだったのだが、彼は気に食わぬ様子でこちらを見て


『ふぅん…俺は来宮 空(キノミヤ ソラ)。ここの店のショウフやってるよ。よろしく』


とかったるく言った
 
…娼婦…?


『お前男の子だろ?なんで娼婦なんだ?』

『ん?あれ知らないの?夫って字で娼夫だよ、ここは男が男の相手するんだ』


男が男の…?


『女性じゃないのか…?』

『あーあれか、借金まみれになってここに押し付けられたんでしょ、しょうがないなぁ先輩の僕が教えてあげよう』


ベッドから飛び降りて俺の前に立つ

背は160〜165ってところで結構小柄だ


『たまーに女の人も来るけどメインは男だね、昔で言う陰間茶屋ってところかな?
おにーさんも華奢なほうだと思うし、俺と同じ部屋ならまず間違いないよ』


そして嫌な宣告をされる


『9割5分くらいでネコだね』


皮肉なことにそう言う顔はにこやかに笑っていた
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