混迷∞青年記A 第七章〜

□第八章第三話
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出発当日

移動に使う車はレンタカーでも借りようとしたのだが、事務の薄らハゲに報告を入れに行った所
気分転換の旅行に行くのなら、と店の6人乗りの車を1台貸してくれた
そんなわけで面倒な手続きはなくすぐに出発でき、もう少しで海が見えるというところまでやってきた


『しっかしまー、あのハゲも分かってんじゃーん』


そんな上機嫌で真ん中の後部座席で跳ねる空に
助手席に座り本を読んでいる龍崎が顔をあげずに言った


『条件付きだろうが』

『その条件、俺としては複雑なんだけどな…』


龍崎の言うハゲの出した条件
それは娼夫の彼等が程良く日焼けをしてくること
そしてまた俺が皆がハメを外し過ぎないよう見張ること
後者は別に構わないし、そのつもりだけれど
前者の方は『いい日焼けの水着の跡は客にうけるから』というもの


『別に日焼けなんて学校のプールでもすっけどな。
サロンなんかに行くよりかはよっぽど健康的じゃね?』


1番後ろの後部座席でゴロンと横になっている春原がそうは言うけれど
うーん…やっぱり割り切れないんだよなぁ


『まぁまぁ、難しいことは考えないで楽しもうよっ
ほら兄ちゃんも!』


そう言った後にバシッと音がしたのは空が隣にいる嵩海を叩いかからだろうか
こういう時、空と嵩海が2人がテンション上げて皆を盛り上げるのがいつもなのだが
今日の嵩海…というより、この企画が決まってからの嵩海はあまり元気がない
嫌な顔こそしないけれど、どことなく強張っていた
現に車の中での会話にも嵩海はほとんど参加していなかった


『大丈夫か嵩海、酔ったか?』

『え?ううん、全然平気だよ。海で何しようかなーって考えてただけだよ』

『ふーん…それならいいけど』


何か思うところでもあるのだろうか

そこから少しして海が見え始め、それからしばらくしてお世話になる旅館に到着した
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