斎千前提世界用

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帰宅後、壱華が真っ先にしたことと言えば沖田に抱きつくことだった。

「でね、演劇やるの。新選組だって。………それでね、ボク、一くん役なんだって」

あうあう、と抱きついたままで彼の胸元に顔を埋めているのは複雑な心理の表れだった
それはどっちの意味で複雑なのかはわからないが。

「それは僕役できなかったから複雑なの?それとも自分の血縁者役だから複雑なのかな?」
「うー……両方。幹部役は皆女子なんだもん……でもボク頑張るから総ちゃん見に来てね!絶対だよ?」

それからいつもの笑みを浮かべた少女に沖田はひとつ軽く息を吐き、わかったよと答えてから口づけた。
ただしそこはリビングで、兄はそんな2人をガン見していた。

「……兄としては妹のいちゃつきシーンを見る方が複雑だけどな。」
「ほら壱夜、そういうことは敢えて言わないものよ?」
「うにゃ!?うにゃぁあああああ……こっちみんなぁあああああっ」

兄ちゃんのばかー!と沖田に抱きついたまま叫んでいるからこそ兄は楽しそうに妹をからかっていた。
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