斎千前提世界用

□―双子の場合―1
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その双子の兄弟は知っていた。
苗字が複数ある意味を……
そして、両親がタイムスリップの結果で結ばれたということを。

だがその双子の兄弟は知らなかった。
理不尽な運命と不可思議な偶然が常に彼らの周りにあるということを……


「司、寄り道しないでってお母さん言ってたよ?」
「ちょっとだけだよ壬ー。すぐ帰るなんてもったいない!」

それは、彼らにとっていつも通りのやり取りのはずだった。
一瞬の浮遊感、そして眼下に広がる見たことのない景色
目の前に立つのは白髪で赤い目の男達

「司……この人達………」
「お父さん達が言ってた“羅刹”ってやつかなー?本物かな!」
「馬鹿司!あれ血だよ!!」

幼い2人の手には木刀が1本ずつ
真剣と対等になれるとはどちらも思っていない
ただ、死なない術を父親から学んでいたというだけ。

『羅刹っていうのはねぇ、心臓を刺すか首を切らないと倒せないんだよ。あとは寿命かな?まぁ……そんな簡単に会わないとは思うけど……』
『壱華は会ったから僕と出会えたんだけどね』

子供達の前だろうと両親は隙があればいちゃついて、伯父さんや祖父が遠い目をよくしているのを眺めるのがある種の日課となっていた。
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