青い炎

□6話
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翌日から、廊下を歩いているとさりげなく足をかけられたり、知らないうちに物を壊されたりした。そして、近くにテニス部がいればみんな普通に話しかけてきた。私はテニス部のみんなに気付かれないようにするため、それに応えていた。端から見ると普段から仲良く話をしているかのようだっただろう。私がいじめられているなんて考えもしないほどに。

学校で呼び出されることは滅多になく、そのかわり麗美や早紀の別邸に呼び出されてそこの庭で暴力を受けた。復学初日に千明に竹刀で叩かれた左腕はその庭で男に踏まれ、徐々に壊れていった。身体の、服で隠れる部分を殴られたり蹴られたり、罵声も浴びせられた。



――

本当に地獄のようだった。どこにいても、氷帝の人間が私を見ているような気がして全く気が休まることはなかった。ここまで嫌われていたことに動揺が隠せなかったし、どうしてかわからない思いでいっぱいだった。剣道をしている人にとって私が邪魔だということ。テニス部のことが好きな女子が私を妬むこと。それはわかった。けど今までなにも言わなかったじゃない。どうして今?今までが偽りだったのならどこからが?弦一郎に会った時?国光に会った時?テニス部のみんなに会った時?そしたら弦一郎達も私のことを嫌ってる?無理して一緒にいたの?
そう考えると国光達のことを怖いと思ってしまう時もあった。それを本人達に気付かれないようにするのにも必死だった。

氷帝の人や剣道に関係する人に嫌われることより、大好きな国光達が私のことを嫌ってることが私にとって一番恐れていることだった。

そうした精神的な痛みが強くて私はなにも言えず、なにも反抗できず、ただ暴力を受けているだけだった。


テニス部と関わるのを止めようにも変に離れると景吾はすぐに勘づくだろうから離れるわけにはいかなかった。入院中にお見舞いに来てくれた長太郎君や若君ともすでに仲良くなっていたから逆に今まで以上に交流ができていた。私が彼らと遊びに出掛けていたのは1年の時もだったけど、いじめられている期間中もだったし、ランニングは朝で人の少ない時間だったため、特別気持ちが悪い時以外は毎日走っていたから宍戸や長太郎君とも会っていた。第一みんなとの関係を絶つなんてしたくなかった。どんなにそれが原因だとわかっていても彼らと離れることを、私には考えられなかった。


私へのいじめが始まってから2カ月後、国光が私に学校のことを聞いてきた。それからのことはさっきの通りだ。

国光は私に手術を受けさせて、自分は氷帝に乗り込んでいった。律儀にアポを取っていたらしく、あっさり校長室まで進んでいき、校長先生に、いじめについて調べるようにとすぐに止めさせるようにとだけ告げた。偶然正門近くにいた忍足がその一連の出来事を見ていて、急いでテニス部のみんなに知らせにいった。部活前の時間だったため、テニスコートにレギュラー全員が集まっていた。そしてみんなが、それはおかしい、昨日もマネージャーをして一緒に帰ったじゃねーか、と口々に言っていたところに国光がやって来た。テニスコートに着いた途端、国光は景吾をフェンスに押し付けた。そして私が手術を受けていることを伝え、帰っていった。

と、後から忍足に聞いた。


でもそれで終わりじゃなかった。レギュラーに知られて開き直った人達はあからさまに私への暴行を始めた。






「思い出しているのか?」

『、、、え?』

「止めてくれ(ボソッ)」

『ん?なに?』

「苦しそうな顔をしている」

『あ。ああ、、、』

「乗るか?」

『うん。、、、ありがとう』


あのことをはっきりと最初から思い出したのは初めてで、身体がどっと疲れていた。国光の背中に乗って帰っていく。、、、国光に腕のことを知られて病院に行く時も、こうやっておんぶしてもらったな。、、、そういえばいったいどこに帰るんだ?私は青学に行ったら普通に神奈川に帰るつもりでいたんだけど。、、、まあ良いか。頭がぼんやりしてきた。

私はそのまま国光の背中に身を任せた。
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