青い炎

□3話
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あの後有栖にこの学校のことをいろいろと教えてもらった。有栖は最初凄く可愛いと思ったのに、話してみるとかなり男前でかっこいい女の子だ。有栖っていう名前も可愛いのに本人は少し嫌みたい。有栖とはとても気があって、まだ会ったばかりなのになんだかずっと前から仲良かったみたいな感じがする。

それで、この学校についての話っていうのはまあ、男子テニス部のこと。この学校のテニス部はかなり強くて今全国大会2連覇を果たしてる。そして王者立海と呼ばれている。――ってここまでは私も話を聞いていたから知ってるけど。
初めて聞いたことはここのファンクラブについて。どうもこのファン達がかなり酷いものらしい。半年前から過激になって今では先生達も手がつけられなくなっているのだと。それ以前は会長が常識のある人でファンクラブというのはテニス部の人達が練習に集中できるように陰ながら応援するという考えで、この人が2年前、3強がレギュラーとして出場した全国で優勝した時に発足させたそうだ。
だが半年前に会長が辞任した後、ファンクラブ内で分裂が起きた。レギュラー個人にファンが着き、中でも仁王雅治のファンはケバくて単なる不良なんだと有栖は呆れた顔をして話した。


しかも同じレギュラーのファン同士で常につるんでいて違うレギュラーのファンとは仲がよろしくないという。なんと勝手な話だ。何故不仲になる必要があるのだ、理解できない。謎だ。

でもまあレギュラーにとってはみんな同じ煩い猿のようなものだろう。幸いにもこのクラスには過激な仁王ファンはいないというから他のクラスに比べれば幾分マシだ。厄介なことにならないようにテニスコートには近付かないようにしよう。うん。



そしてそんなこんなで放課後になった。授業に関しては前の学校の方が大分進んでいるから問題ない。


柳「九条」

『ん?どうしたの、柳君?』

柳「すまないが付き合ってくれないか?」

「「キャー!!」」

『、、、お、お断りします。だってあなた達のファンって怖いんでしょ?今だって凄い叫ばれてるし睨まれてるし』

柳「だが俺達にとっては精市が最高に怖いんだ。頼む。」

「「キャー!!キャー!!」」

『そんなこと知らないわよ。自分から猿の集団に目をつけられに行くようなものじゃない、絶対に嫌。』

「「ギャー!!」」

丸井「柳ーまだかよぃ」

仁王「早くしないとまた幸村がキレるぜよ」


なんと、もしや援軍?それは困る。3対1はかなり不利だ。こういうときは有――

丸井「早くこいつ連れていかねーと命が危ないっ」

『わわっ!!ちょっとなにすんのよっ!!』

「「イーヤー!!キャー!!」」

なんと援軍のうちの1人、赤い髪の男の子に腕を掴まれそのまま走ることになった。あ、ちょっとヤバイかも。


『ね、ねえ赤髪君。わかったから、1人で走れるから腕を離してくれないかなっ』

丸井「え?あ、悪ぃ」

『良いよ気にしないで』


危ない危ない。よりにもよって左だったから焦ったわ。うん、大丈夫そう。
それにしても、一体なんなの?

有栖から聞いた話には続きがあって、テニス部と関わるとファンが黙っていないというのだ。誰のファンでもない女の子が少しでもレギュラーと話していると、ファンクラブに呼び出しをされたり、物を隠されたり、上履きや机の中にゴミや虫を入れられたり、挙げ句、暴力を奮われたり、、、酷いめに合わされていたと。被害者の女の子はほとんどが学校を辞めてしまっているのだという。本当にどうしてこうテニス部というのはどこも厄介なんだろうか。


話を元に戻すと、とにかくテニス部に極力関わらないようにしようと思っていた矢先に柳君からの迷惑なお誘いがあり、丁重に断ろうと思ったのに、この赤髪君が勝手に私を引っ張るから廊下で女子達に凄い形相で睨まれてしまったじゃないか。どうしてくれるんだ、この状況。恐らく、いや、絶対にこの赤髪君はテニス部なのだろう。ついでに一緒にいる銀髪の彼も。


そうこうしているうちにやはりというべきか、到着したのはテニスコート。まだ放課後になったばかりだからか、フェンスの周りは思っていたよりも少ない人数しか女子はいなかった。それでもテニスコートをぐるっと囲めるほどの人数はいる。どうすればこんなに早くにここに来ることができるのだろう?


仁王「今日もこんなに、ご苦労なことじゃの」

丸井「本当だぜぃ。うぜー」

柳「行くぞ」


3人は女子達の間を通ってフェンスの扉を開けてコートの中に入っていく。


「キャー!!」
「仁王くーん!!」
「丸井くーん!!」
「柳くーん!!」


『、、、』

仁王「お前さんも早く入ってきんしゃい」

『え?あ、ですよねー』


わかっていたけど周りの視線にこれまでより殺気が増してる。危険すぎる。




幸村「やあ。君が九条さんだね?」


素晴らしい美少女が私に声をかけてきた。いや、以前読んだテニス雑誌に彼が載っていたのをふと思い出した。あの時も美少女だと思って、一緒に読んでいたナルシストに

“あーん?まあ、確かに見た目は女にしか見えないが、テニスは恐ろしいほど強いぜ”


って言われたんだ。うわー本物だ。


幸村「ねえ、埋めてほしいの?」

『はい?』

幸村「よし、地面に埋めよう」

『いやいやいや、なに言ってるんですか、幸村精市君』

全「!?」



どうしたんだろ、みんな固まっちゃった。幸村君はさっきとんでもない発言をした時は美しい笑みを浮かべていたのに今は凄く間抜けな顔をしてる。間抜けな顔なのにキレイだな、ほんと。



全(どうして幸村/俺/精市/の名前を知っているんだ?)


幸村(いや、すでに誰かに聞いたのかもしれないな)

柳(南に精市のことを聞いた確率89.3%だが顔を見てすぐに精市だと判断できるものだろうか?)


、、、どうすれば良いんだろう。朝もだったけどこういう雰囲気苦手だな。
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