青い炎

□8話
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目が覚めると見慣れた部屋だった。


「起きたか?」

『うん。ありがとう。今何時?』


ここは国光の家で国光の部屋。


「夜の8時だ」

『そっか』

「もう遅いから泊まっていけ」

『ううん。悪いから帰るよ』

「気にしなくて良いんだぞ?」

『うん、でも今日は帰るよ』

「そうか。では送っていく」

『、、、ありがとう』



まだ頭がぼんやりしてるけど気分は良くなっている。国光の家に泊まらせてもらうことはよくあって、今さら遠慮したりは、図々しいけどしない。国光の家族はみんな優しいし、あのことも知っていて自分の子供のことみたいに心配してくれた。ただ今は1人になりたい。
部屋を出て玄関に向かっていると伯父様に会った。いつも通り優しい笑顔で、またおいでと言ってくれた。私は精一杯笑って頷いた。


駅に着くまで私達はなにも話さなかった。国光がなにか言いたそうだったから私は黙ってそれを待っていたんだ。駅に着いて私が、じゃあね、と言うとなぜ?という顔をした国光。神奈川まで来てくれるつもりだったんだろう。


『ここまでで良いよ』

「いや、神奈川まで――」

『ううん。ここで良い』

「、、、もう遅いし、、、そんなに俺は頼りにならないか?」

『!?』

どうして?国光は頼りになるよ。いつも頼ってばかりだよ?どうしてそんなこと言うの?

「、、、家に着いたら電話してくれ」


『う、うん』


頼ってばかりだがら心配かけたくなくて、なのに結局心配かけちゃって、、、どうしたら良いの?もしかしたら呆れられてる?ううん。最初から私のことなんて嫌いだった?わからない。信じてた友達が、友達だと思ってたのが自分だけだったことを知って、もうなにがなんだかわからないんだ。いじめを受けていたのは期間にして10月から2月。入院していたのと同じ4ヶ月だったけど剣道をやるためのリハビリは全く苦にならなくて、学校に行ってからの4ヶ月はとてつもなく長く感じた。

そうか。せっかく国光が校長先生に話してくれたのに私がいじめられ続けたからもうどうしようもないと思ったのか。それをまた黙っていたから。


そっか。さっきなにか言いたそうだったのは、もう関わらないでほしいと言いたかったのかも。、、、どうしよう。国光に嫌われちゃったよ。


電車の中で周りの目なんて気にしないで私は泣いた。神奈川の最寄りの駅に着く頃には目が真っ赤になっていた。



駅の改札口を抜けて家に向かって歩き出す。

――ドンッ

『ャ!!』

「す、すんませんっ!!」

『え?』

「あれ?」

『切原、くん?』

「九条先輩じゃないッスか!!すんませんっした!!」

『そ、そんなに謝らなくて良いよ。周りの人も驚いてるよっ』

「あ、ああ。ってぇえ!?」

『こ、今度はなに!?』

「先輩、泣いてます?」

『え?ああ、大丈夫だよ』

「大丈夫じゃないッスよ。目、真っ赤じゃないッスか!!」

『まあ、、、でも大――』

「ダメです。でも困ったな。こういう時、どうしたら良いのか俺よくわかんないんスよ」

『こういう時はほおっておくのが良いんだよ』

「いや、それは間違いだってわかるッス」

『でも本当にそっとしといた方が良い時もあるんだよ?』

「ってことは先輩はそっとしとかない方が良いってことッスよね?」

『いやだから、今がそのと――』

「どうしたらいいんだろ。とりあえず柳先輩に――」

『柳君!?』

「わっ!!なんスか!?」

『忘れてた、柳君!!そうだ、弦一郎!!』

携帯を見てみると14時には弦一郎からのメールが来ていた。

『切原君、今日の部活って何時までだった?』

「えっ?えっと、14時ッス」

『早っ!!』

「今日は幸村部長が話があるって急遽ミーティングになって、せっかくだから練習もなしってなったんスよ」

『せ、せっかくだからって、、、。そんなので良いの?』

「初めてッスよ、こんなの。でもその話ってのがちょっと、あれだったんで、、、。ってか直接の原因は氷帝の部長なんスけどね」

『ん?あれって?氷帝の部長?』


あれっていうのはもしかして昨日のマネージャーのことかな?

「いえ、先輩が気にすることじゃないッス」

『そう?』



あっ!!それより弦一郎!!珍しく返信が早かったのに私が遅れちゃったよ、ごめんっ!!


「っていうか泣いてるの!!やっぱり柳先輩に聞いてみよ!!」


弦一郎、返信遅れてごめんね。柳君に聞いてくれてありがとう。それにしても弦一郎が携帯を見るなんて珍しいね。驚いたよ。

っと、これで送信!!



「――そうなんッスよ!!それで、俺どうしたら良いんスかね?、、、え?後は任せろ?、、、先輩が柳先輩に電話をかけるまであと5秒?どういうことッスか!?、、、って切れちゃった。先輩ー今柳先輩が――」

『ごめん、切原君。今から柳君と話すからまたね、ばいばい』

「え?、、、はああああ!?」
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