青い炎

□13話
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Side 仁王


九条をファンクラブから守るんは賛成じゃ。そのためにマネージャーにさせるんも納得じゃ。学校に向かうバスの中で跡部と手塚に誓ったきに、なにがなんでも九条を守る。だが、それと有栖をまたマネージャーにするんは話が別じゃ。そんなこと、1言も言わなかったじゃなか。幸村、お前さん、また有栖を傷付けるつもりか?


―――5ヶ月前11月

南「おっはよー」

仁王「、、、ああ」

南「ねえ、雅治。マネージャー1人になっちゃったんだって?」

仁王「そうなんじゃ」

南「その子も、転校するらしいよ」

仁王「、、、そうか」

南「みんなで遊ばない?」

仁王「なぜそうなるんじゃ?」

南「気分転換、的な?ね、丸井」

丸井「はよっ。ってわりぃ、南。俺もそんな気分じゃねぇんだ」

南「丸いブタのくせに」

丸井「はあ!?」

南「そんなんじゃもっと太るよ!!遊んで運動しなきゃ!!」

丸井「運動部なんだから運動してるよぃ!!」

南「運動してるのにこのお腹なのかい」

丸井「うるせーなー!!」

南「わっ!!か弱い女子に掴みかかるなんてっ!!」

丸井「か弱くねーだろぃ!!」

南「バレたか。こうなったら!!レーザービーム!!」

柳生「それは私のです!!」

丸井「うわっ!!柳生、お前のクラスと方向逆だろぃ!!」

南「あれだよね。ジャッカルの“俺かよ”的なノリだよ」

丸井「だ、だよな」

南「柳生がこんな人だとは思ってなかったよー」

柳生「うっ、、、私のキャラが、、、」


―――

有栖は1年の時から席替えをするたびに隣になってた。お互い、またお前か、と嘆いていたが俺は嫌じゃなかった。むしろ嬉しかった。

有栖が幸村の幼馴染みだってことは1年の初めの頃に知った。その時は俺にとって、ただ嫌味を言い合うダチみたいな存在だった。俺と有栖と幸村、たまにだが3人で話すこともあったが特別いつも一緒にいるってわけじゃなく、適度な関係を保っていた。別に深い意味はなかった。有栖も他のやつといたからじゃった。けど2年になって俺と丸井が同じクラスになってから有栖がテニス部と関わることが多くなった。丸井、丸井繋がりでジャッカル、俺繋がりで柳生。その頃は有栖の姉貴が会長をしとってファンクラブが俺らに関わる女子達をどうにかしようということにはなっていなかった。

じゃけど、テニス部が全国大会で2連覇をして有栖の姉貴が転校してからがらりと変わった状況に、俺らは困惑しとった。そんな時でも有栖は変わらず俺らといつもふざけてた。俺らはそのことに不安だったが有栖はいつも通り。しかも俺らん中でも話しづらい話題であるマネージャーのことも時々話題に振ってきたりしとった。
マネージャーが1人になり、その1人も転校しようとしていた時のこと。

俺は衝撃的だったあの日のことを、さっきの記憶の続きを思い出す。


―――


南「あっ!!」

仁王「どうしたんじゃ?」

南「私、テニス部のマネージャーになることに決めたから」

「「「はあ!?」」」

仁王「なに言うとるんじゃ、意味わからん!!」

丸井「そうだぜ!!どういうことになるか、わかるだろ!!」

幸村「どうしたんだいみんな?」

柳生「幸村君!!南さんが――」

南「精市、私テニス部のマネージャーになる」

幸村「っ!?なにを言っているんだい?」

南「もう決めちゃったー」

幸村「ふざけるな!!」

南「ぅわお!!そんなに?」

仁王「当たり前じゃき」

南「もう決めたんだって」

幸村「俺が部長だよ。俺が入部届を受け取らないとマネージャーになることは認めない」

南「なんでそんなに頑ななの?忘れちゃった?私喧嘩強いよ。いじめられるわけないじゃん」

仁王「有栖が喧嘩が強くても心配なもんは心配なんじゃ」

南「え!?仁王心配してくれんの?珍しく私に優しいー!!」

仁王「本気じゃ、有栖」

幸村「俺もだよ。絶対に認めない。もうそんなふざけたことを口にするなよ」

南「まったく、、、大丈夫だよ。今までの子と同じようにはならない。それにいじめを止めさせられないのはみんなのせいじゃないよ」

「「「「、、、」」」」

南「ってことだから、精市、入部届」

ビリッ――
幸村「受け取らない。じゃあね」


―――


あの後有栖は1日に何度も幸村に入部届を渡しにいき、そのたびに紙を破かれた。それを何日も続けていたある日、有栖は全校で集まる集会でマイクを司会から奪い取り、自分が男子テニス部のマネージャーだと言った。その瞬間有栖がファンクラブの女に狙われることが決定づけられた。有栖は放課後テニスコートにやってきて“そういうことだからよろしく”と言って黙々と仕事をした。



有栖がマネージャーになっても、特別なにかされているという感じはなかった。といっても今まで散々それで勘違いをしていた俺らは有栖の周辺をかなり注意していた。ある時有栖は用事があるから部活を休むと言ってきたんで俺らも部活をなしにして有栖を見ていることにした。

放課後有栖を追って体育館裏に来た。そこで見たのは有栖が女達が襲ってくるのを避けて“マネージャーは止めないよ”と言っている様子だった。

やっぱりいじめられちょった。けど従兄弟の影響で喧嘩が強い有栖は暴力は受けとらんかった。次の日俺らは有栖に、マネージャーを止めるように言ったが“暴力は受けていないし他の、物を盗まれるとか小さいことを私が気にするわけないでしょ”とまったく聞く耳を持たなかった。けどその日から有栖は上履きにがびょうが入っていたこと、机の中に悪口を書かれた紙が入っていたこと、呼び出しをされて殴られそうになったがいつも通りかわしたこと、階段から突き落とされそうになったこと――。逐一俺らに報告しに来るようになった。有栖はそのすべてのいじめをまったく気にしてなく、こんなものなんだねと笑っていた。俺らは呆気にとられ本人が気にしていないものをどうしたら良いのかと思っていた。


だが有栖がマネージャーになってから2ヵ月が経った日のこと、放課後の練習が終わり幸村の話も終わってから、有栖は私も話があると前に出てきて、マネージャーを止めることにしたと1言だけ言った。

それから有栖は学校でも話しかけてこなくなった。幼馴染の幸村ともテニス部の誰とも。なにもわからないままで、今さっき3ヵ月ぶりに有栖と話した。3ヵ月ぶりに名前を呼んでもらった。じゃけど次の瞬間には意味深な言葉。

“あの話もまんざらじゃなさそうでしょ”


あの話ってなんじゃ?それがおまんがマネージャーを止めて俺らと関わらなくなった原因なんか?




とにかく有栖をもう1度マネージャーにすることは賛成できん。有栖が傷付かなければ今の状態のままの方がましじゃ。

Side end
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