青い炎

□26話
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どうして!?国光!!どうして無茶するの!?

私のせいだ!!私のせいで幸村君が怪我を!!

私なんかいなきゃ良かったんだ!!

みんなの邪魔にしかならない!!




ガバッ――


『はあ、はあ、はあ、、、』


ここ、どこ?


ああ、私の家だ。待っていても誰も帰って来ない家。寂しい家。東京の家では必ずお母さんやお父さんが帰って来てくれる、そうわかっていたから寂しくなかった。だけどここはいくら待っても誰も帰って来ない。、、、私がそうしたのに――。



助けて―――



こんな邪魔でしかない私なんて誰も助けてくれないよね。


私はとんでもないことをしてしまった。


もう私に戻る場所なんてどこにもない。大事な部長さんを怪我させてしまった私を、もう立海のみんなは嫌いになっただろう。私に手をさし伸ばさなきゃ良かったって――。


もう私にはこの寂しい家しか居場所がないんだ――。




ブーブー―――



携帯?、、、弦一郎からのメールだ。弦一郎、、、。ようやく弦一郎が私のことを好きだと本気で思ってくれているってわかったのに、、、嫌われちゃったよね。


メールはきっと幸村君の具合についてだ。時計を見てみると夜の7時だから試合も終わってもう家に着いているだろう。


仕事を放り投げてしまったんだから、どんなに目を背けたくても弦一郎からのメールを読まなくてはいけない。それはわかってるけど怖い。幸村君の怪我が酷かったら試合には出られないかもしれない。私のせいで――。



結局携帯を開いたのはそれから30分後。




“大丈夫か?お前が倒れた後、タイブレークになって35-37で跡部が勝利した。手塚は最後まで強かった。その後控え選手同士の対決となり青学は越前リョーマ、氷帝は日吉若が試合をして、6-4で越前が勝利した。結果、青学が1回戦突破だ。時間がおしたため2回戦以降は明日となった。幸村は右手首を骨折してぎりぎり全国に間に合うだろうというところだ。お前が動揺していると思って幸村達他の部員にはお前に連絡を入れないように伝えてある。今日はしっかり休め。明日は、どうする?”




、、、骨折?、、、ぎりぎり全国に間に合う?



ああ、本当に私は――。


もうみんなに合わせる顔なんてないよ。みんな弦一郎に言われなくても連絡なんてしてこないよ。みんな私のことが嫌いになったんだから。幸村君を試合に出せなくなってしまったんだ。もしこれで立海が負けるなんてことになったら、、、私どうしたら良いの?




私は涙も出なかった。ただ絶望してベッドの上に座り込んで一夜を過ごした。





翌朝になって弦一郎に今日は行かないとメールを送った。

私は1日なにもしなかった。ベッドの上で膝を抱えて座っていた。


それだけで1日は終わる。あっという間だ。つい4ヵ月前まで何日もこうして過ごしたんだから。



ブーブー――


有栖からの電話、、、。


今日の試合結果を報告してくれようと電話してきてくれたんだろうな。でももう私には関係ないよ。私はみんなにそばにいたらいけない。みんなを不幸にする。


着信を伝えるバイブレーションが止まった。



そしてしばらくしてまた鳴った。


出れない、、、。


有栖にも嫌われたと思うと、、、。




どれくらい時間が経ったかな、、、。


あれから何度かバイブレーションが鳴った。



『、、、はい』


有栖にマネージャーの仕事を1人でやらせてしまったんだからそれも謝らなくちゃいけないと思ってようやく私は携帯をとった。


“蘭華!?大丈夫!?”

『有栖、、、ごめんね』

“なにが?蘭華が謝ることなんてなにもないよ”



謝ってもどうしようもできないことをしてしまったもんね、、、。


『でもごめん。幸村君のことも、今日のことも――』

“精市のことも大丈夫だし、今日のこと、、、は、、、”


今日、なにかあったのかな、、、?



“蘭華、ごめん”

『え?』

“今日のことを伝えようと思って電話したんだけど、、、”


どうしてこんなに躊躇してるの?まさか、、、


『負けた、、、?』

“それはないよ!!そうじゃなくて、、、”

『なに?』

“不動峰の橘君って知り合い?”

『橘君?う、うん。そうだけどどうかした?』


なんで橘君の名前が出てくるんだろう?


“準決勝の相手が不動峰だったんだけど、、、”

『うん』

“赤也君がさ、、、”


赤也君が?


“赤也君が橘君に大怪我を負わせたんだ”

『え?』


赤也君が橘君に?


そりゃあテニスをしてれば怪我はするだろうけど、、、。


“蘭華が思ってるのと違うの”

『どういうこと?』

“わざと橘君にボールを当てたの、何発も、、、”

『どういうこと!?』


わざと当てたって、、、そんな馬鹿な、、、


“お、落ち着いて聞いてね、、、。最初橘君が赤也君をおしてて、1ゲーム先取したの。けどその後赤也君が赤目になってから変わったの”

『変わった?』

“スピードもパワーも普段の比にならないくらい上がったの。赤也君は次から次に橘君の身体に打球を当てていった”

『そ、そんなことって――』


そんなこと、、、わざと人を傷つけるなんて、、、。


“赤也君が勝って立海がその試合に勝ったの。試合が終わった後、橘君の妹だって言う子が私達のところにきてね、、、”

『杏ちゃんが、、、?』

“それで言ったの。、、、蘭華さんはこんな酷い部活のマネージャーなんですねって”

『ッ!?』

“ごめん、蘭華は悪くないのに蘭華のこと――”

『、、、わかった』


杏ちゃんにも嫌われちゃったんだね。橘君も傷つけてしまったんだ。私に関わったせいかもしれない。わたしのせいだ。2回しか会ってないけど2人のこと好きだったのに。つい昨日私に笑いかけてくれていたのに、、、。


“ごめんね、、、”

『どうして有栖が謝るのよ』

“私が止めていれば、、、”

『試合中に選手じゃない人が口出せないでしょ』

“だけどっ”

『ごめん、私、部活止めるね』

“え!?なに言ってんの!?赤也君が橘君を怪我させたから!?”

『そうじゃないよ。私がいたらいろんな人に迷惑をかけるから。私も幸村君に怪我させちゃったんだから赤也君のこと、言えないよ、、、』

“なんでそんなこと言うの!?《行くよ、暗いから懐中電灯持ってきた》あ、うん!!蘭華、今から家に行くか――”

『暗い、、、あ、、、もう10時だよ。危ないから来ないで』


もちろんそれだけが理由じゃない。今は誰にも会いたくないんだ。ましてや10時だなんて中学生の女の子が出かけるには時間が遅すぎる。


“なに?今時間知ったの!?”

『うん』


今日1日時計も外も見てなかったんだ。カーテンの隙間から明かりが射し込まなくなったから夜だっていうのはわかったけど。


“うんってあんた1日なにしてたの!?”

『なにもしてないよ。ただぼーとしてただけ』

“もしかして、、、本当になにもしてない?ご飯も食べてない?”

『ああ、そうだね』


お腹が空いてるっていう感覚もなかったから忘れてたよ。


“馬鹿!!死んじゃうよ!!”

『1日食べないくらいじゃ死なないよ』


実際死ななかったし――。


“ダメ!!今から行くからね!!行こう、精市!!”

『来ないで!!』


誰にも会いたくないんだってば。それに幸村君には1番会いたくない。


『来ても会わないから!!お願いだから来ないで!!』


ピッ――


電話を切って壁に投げつけた。



なんで?赤也君、、、。私が言えないけど人を傷つけるなんて、、、。赤也君は幸村君を傷つけた私を許せないだろうけど私も橘君を傷つけた赤也君が許せない――



私、今なんて思った、、、?



一緒にいた期間は短かったけど私の中で大きな存在になった立海のみんな。かけがえのない大切な人達。私を支えてくれたみんな。もちろん赤也君も。



なのに、そんな赤也君を許せないって思った?



私はなんて酷い人間なんだろう――。



だけど、そう思うのに、、、私赤也君のこと、、、。



やっぱり誰にも会えない。だって酷いこと言っちゃう。



でももうみんなも私のこと、好きじゃなくなってるんだ。



どうして、、、どうしてこうなっちゃうんだろう、、、。
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