青い炎

□3話
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「、、、蘭華」

『!?弦一郎!!』

真田「蘭華、久し振りだな」

『ああ!!元気にしていたか?』

真田「勿論だ。お前は――」

幸村「真田。彼女と知り合いなのかい?」

真田「ああ。幼馴染みでな。小さい頃から一緒にけ――」

『そうなんだよ。弦一郎とは小さい頃けん玉でいつも勝負してたんだ。』



そう。弦一郎は私の幼馴染み。私の過去を知っている人の1人。言っていないこともあるんだけど。とにかく、弦一郎には口止めをしておかなければいけないな。優しいから頼めば必ずそうしてくれる、信頼できる男だ。だからこそこれ以上心配はかけられない。



仁王「けん玉、、、。真田がけん玉やっとるとこなんて想像できないナリ」

丸井「本当だぜぃ」

柳「、、、。弦一郎、もしかして以前話していた幼馴染みというのが?」

真田「うむ。そうだ。」



えっ!?柳君は弦一郎からなにか聞いているってこと?それは困る。
私は柳君にだけわかるように顔を向けて精一杯の笑顔で無言の威圧をかけてみた。するとなにが言いたいのかわかったようで、柳君はゆっくり頷いてくれた。良かった。


柳「精市、早く練習を始めないか?」

幸村「(ま、良いか)ああ、そうだね。」

真田「ちょっと良いか?今蘭華を帰すと女子達が――」

幸村「そうだね。九条さん、部員達には説明しておくから部活が終わるまで部室で待っててくれるかい?」

『あ、うん。わかった。』


さすがに私もこの状況の中、あの集団を通って帰る度胸はないわ。この時点で私の明日からの身の安全は危うくなっているけど。

幸村君達と一緒に部室に向かうと黒髪の天然パーマ君と眼鏡のいかにも賢そうな男の子がいた。なにやら眼鏡君が黒髪天然パーマ君に制服の乱れを指導しているところだったらしい。


切原「先輩達!!遅いッスよー」

柳生「おや?その方がお昼休みに話していた九条さんですか?」

丸井「おう!!そうだぜぃ」

『え?昼休み?』

柳生「ええ。お昼休みの時に柳君からあなたのお話を聞いたんです」

柳「俺達はいつも屋上で昼食を食べているんだ。その時に丸井が転入生の話題を出してきたから朝のことを話したんだ」

『うわっ、酷い。じゃあみんな私の失態を知ってるんだね、、、』


柳君と幸村君は爽やかに笑い、弦一郎と眼鏡君は苦笑いをし、その他の人達は思い出したのか大爆笑してる。


幸村「あ、忘れるところだった。今帰ると大変なことになるだろうから部活が終わるまで九条さんには部室にいてもらうことにしたから」

切原「了解ッス」

柳生「わかりました」

『なんかごめんね、ありがとう』


みんな見ず知らずの人に親切だね。でも良いのかな?みんなは女子を嫌ってたりしないのか?だって彼らの周りには今もいる騒がしい女子ばかりなんだよね。状況が同じようなものでもどう思うのかはやっぱり学校それぞれで違うってことか。さて、みんなは練習をしにいったし、私はなにをしてよっかな。
ドリンクでも作ってようかな。でも勝手にやって良いのかな?聞きにいけば良いんだろうけどあんまり目立つとファンの子達の目が怖いからなるべく部室の中にいたいし、んー、ま、怒られたら謝れば良いや。

ドリンク作りは前の学校で無理矢理臨時マネージャーみたいなことを何度かやらされてたからなんとなくわかる。味の保証はできないけど。


『――よし、これでレギュラーの分は完成っと。』

窓からコートを見てみたけどまだ休憩には時間がありそう。けど私もそんなに手際がいいわけじゃないから他の部員達の分は間に合わなくなりそうだな。ドリンク作りを始める前に部室内を少し見させてもらっている時に見つけたタンクに他の部員達の分は入れちゃえば良いか。手抜きでごめんね、田中君。幸村「田中は残念ながら、うちの部員にはいないなあ」


『え?』

幸村「ん?」

『幸村君っ!!あーびっくりした。いきなり喋らないでよ。ってか今私声に出して――』

幸村「出してたよ」

『そんな馬鹿な。私独り言は多いけど今までうっかり口に出しちゃうことなんて――』

幸村「けど出てたよ」

『、、、そうですか』

幸村「そんなことより、なにしてるの?」

『あ、ごめん。なにもしないで部室にお邪魔するよりなにかした方が良いかなって思って、勝手にドリンクを作ってたんだ。いけなかった?』

幸村「ううん。でもそんなこと気にしなくて良かったのに」

『私も暇だったし。ってかもう休憩?』

幸村「まだだよ。俺はちょっとタオルを取りにきただけ」

『なんだ、良かった。でもタオルってあそこにある、篭に入ってるやつ?』

幸村「そうだよ」

『洗濯はされてるけど畳んだりはしないの?』

幸村「洗濯は平の部員がやるんだけど畳むまではなかなか手がまわらないんだよね。」

『平の部員って、それじゃ練習できないじゃん。マネージャーはいないの?』

幸村「いた時もあるけどいろいろあって辞めちゃったんだ」

『それってファンクラブが原因だったりする?』

幸村「そうなんだよ。学校自体を退学してしまった人もいてね。俺達の目の届かない所でいじめとか、そういうのがあったんだ。それでも何人かやってくれるって言う人が、あ、ミーハーじゃない子なんだけどね、志願してくれたんだけど結局みんな、守りきれなかったんだ。俺が――ってこんなこと人に聞かせるものじゃないな、ごめんね」

『良いよ良いよ。私も作業しながらだったし、聞く態度じゃなくてごめんね』

幸村「気にしないで。なんでだろ?初めて会ったのにこんな話、、、本当にごめんね」

『謝らないでよ。でもなんだか意外。幸村君ってあんまり人に弱味とか見せないんじゃない?』

幸村「!?、、、どうして?」

『んー、なんとなくかな?でもたまには誰かに思ってることを話した方が良いよ。柳君とか凄く適任そうだしさ』

幸村「ふふっ」

『え?私なんかおかしなこと言った?』

幸村「いや、ありがとう。そろそろ戻らないと」

『あ、なんか引き留めちゃったね、ごめん』

幸村「大丈夫。もうしばらくしたら休憩にするからドリンク、お願いできるかい?」

『りょーかい』

幸村「ありがとう。じゃあね」

『頑張ってねー』


幸村精市君。なんだか今にも消えちゃいそうな男の子だな。でも部長だからかな?しっかり前を見てるって目をしてた。マネージャーの子を守るなんて、みんなもテニスに集中しなくちゃいけなかったんだから気付かなくても無理ないよ。なのにその責任を全部1人で抱え込んでる。きっと部員のみんなも同じことを思ってるはずだから一緒に考えれば良いのに。けどそれができないほど彼は多くのことを背負ってるのだろうな。



レギュラー以外の部員の分も用意し終えてすぐに幸村君の掛け声がかかり、休憩になった。
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