青い炎

□6話
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『ねえ、国光』

「ん?なんだ?」

『私のあのことを知っているのって乾君だけ?』

「ああ」

『けど不二君は私が剣道をやってたことを知ってたみたいだったよ?』

「剣道のことは全員が知ってるぞ」

『え!?じゃあ今やってないことは、、、?』

「普通に大怪我をしてリハビリ中だと言ってある」

『あ、そうなんだ』

「まあ事実だろ?事故があったことは報道されていたのだし」

『そう、だね、、、』

「事故、、、じゃないけどな」

『う、ん、、、』


ダメだ、この話をすると息が苦しくなる。辛い。もう嫌。


「この話は止めにしよう」

『、、、うん』


ありがとう。
今日はいろいろなことを知って、初めて自分からあの時のことを思い出した。普段は自分から思い出そうとしない。けどそうしなくても目を閉じるとあの時の状況が脳裏に浮かんでくる。嘲るような笑い声、それから憎悪、妬みの感情でいっぱいになった私の長くて苦しい時間。私がいるところ、行くところ全てが闇に染まっていた。私はひたすらじっと耐えて、テニス部のみんなと国光と家族の前で無理矢理に笑顔を作ることで精一杯の日々だった。無理矢理だったけど、その時間があったからこそ私は自分を保っていることができていた。




氷帝に入学して最初に仲良くなったのは同じクラスになった跡部景吾。きっかけは教師達の私達に対する期待の眼差し。私は剣道、景吾はテニスと財力への。けど私達はそんな期待に臆することなんてなかった。絶対的な自信があったんだ。といっても私も景吾も血の滲むような努力を重ねていたからだ。



景吾のことを嫌っている人がいても、景吾の家があの跡部財閥であることを恐れて誰もなにも言わなかった。女子達は景吾の容姿と財力に目を奪われて騒ぎ立てていた。


武士である以上、なにかを軽視することは許されないだろうと思っていた私は剣道だけではなく勉強でも常に結果を残していた。そんな私に良い印象を持っている人は少ないだろうとは思っていたが、それでも剣道部のみんなは同じ仲間として心から応援してくれていたし仲の良い友達もいた。、、、だけどそれは私の思い違いだった。



――1年前の事故は恐らく、私がいると個人戦で準優勝留まりなのを妬んだ剣士が計画したことだろう。
私が気絶する前に見たのは前選手権大会個人戦で準優勝した、山吹中の小林渚と、前年度の全国大会個人戦で準優勝した、四天宝寺中の榊原藍だった。その側には各中学の剣士が何人かいた。


氷帝剣道部は、団体戦では優勝を逃してしまうことがあったが、必ずどの大会でも準優勝はしていた。個人戦では私が優勝を譲ることは一切なかった。小林さんと榊原さんは普段から大会で会うたび、私に直接嫌味を言ってきていた人達だ。
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