「よく食べる女は可愛いよな」
「は?」
現在進行形でアホほどマジバのハンバーガーを頬張ってる奴が何を言う。
いや、それより、火神の基準で“よく食べる”ってどんだけよ。世界基準は知らないけど日本基準は確実にお主の思ってる量より少ないんだからな!!
………というか。
「バスケばかがみにも女子への興味はあったんだねびっくりだ」
「ばかがみ言うな!それにそんな驚く事でもないだろ」
「はは、怒りなさんなって。びっくりしたとは言ったけどそこまで驚いちゃないよ、火神もちゃんと思春期してて安心した」
「ふーん、それにしちゃ随分すげえことになってたけどな、さっきの顔」
こーんな感じに目おっぴろげて口なんて真一文字だったぜお前ー、なんて言って見せてくれた、私の真似であろう彼の表情は、
「…ふむ、こりゃ確かにひどく驚いたときの顔だわ」
「だろ?てかそんな顔で驚くほど、お前から見ると普段の俺は女に興味なさげなのかよ」
そして火神はハンバーガーに手を伸ばす。これでもう18個目なんだけど。
「あー、そりゃまあ会話の内容が八割方バスケと黒子くんだし、告白断る理由も“バスケが…愛しすぎて…お前に構ってられねえんだ…”らしいしさ」
「前者は認めるけど、なんでだよ後者!なんで謎脚色が加えられてんだよ!アホか!ちげぇよ!」
「聞いた話にちょっと飾り付けしただけじゃんかー。バスケが大事っていう重要なとこは合ってるんだし」
まあいいじゃん、と私はいい笑顔のままポテトに手を伸ばす。あーもー火神いじりは楽しいですな。
……………。
そしてしばしの沈黙。いや、とても沈黙。アカンこれ完全に不貞腐れモードだ。ほっぺ膨らまして頬杖ついて窓の外眺めちゃってる。…あーもー分かりやすくて可愛いやっちゃなー、ば可愛いようんうん!なんて思ったり。って、いやいやいや、その前に私は迅速かつ早急に謝るべきなのかしら。あれこれ迅速と早急ってどっちも同じよーな意味じゃん失敗失敗。てへぺろ。
てへぺろを駆使すればとりあえずなんとでもなると最近学んだ私に死角はない。
「…お前はさ」
「お、おう!!…なにさ」
「その目の前の山盛りのポテトの量をどう思う」
「えっ、これ?普通だと思うけど」
「はぁー…」
「ため息とかやめてよ地味に傷つくんだけど!」
火神はまだ少しご機嫌ななめのようで、しかもなんか今度は、心なしか、残念なものを見る目で、見られてる、気がする。もしやてへぺろの利便性について考えてたのバレた感じ?
「ほんとなんつーか馬鹿よなお前」
「いやいや、あんたこそさっきからなんなんのさばかがみ」
「んだーーーっ!もう!鈍い!わざとか!?わざとなのか畜生!」
「だからなんだってんだよもー!」
いつも馬鹿だ馬鹿だと思ってたけどここまでわけわからんのは初めてかもしれない。今日はベストオブばかがみの日に決定。
「……だから、最初俺はよく食べる女は可愛いよなって言っただろ」
さっきよりはいくらか落ち着いた様子で髪の毛をわしゃわしゃと弄りながら話し出したのでこちらも冷静に耳を傾ける。
「うん、言った」
「そんで、そのお前の目の前のポテト山の高さの異常さについてもつっこんだはずだ」
「いやこれ異常じゃな「とりあえず聞け」ハイ」
「でだ、この量を一人で食うお前は世間的に見ても俺から見てもよく食べる女だと称されるレベルなわけだが、今俺が言わんとしている事が分かるか」
「………あのー、それは、今までの流れ的に、つまり、いや、でも、え、はい?」
「……だからっ!俺はお前を可愛いと思ってるしむしろ女ならお前にしか興味はない!!以上!!」
ストレートな言葉に赤くなってしまった顔を手で隠してウワーヤメテ!と叫んだのと、まるで“逃げんなよ”と言うかのように奴に腕を捕まれたのは一体どちらが先だったか。
(やっぱ一番はバスケが大事だけど、それ以上に俺にとって大事にしたい女ができたから、あんたの気持ちには応えらんねぇわ)
「回りくどすぎる!」「恥ずかしかったんだよ分かれ!」
火神くんとマジバに行きたい、夏←
拍手ありがとうございました!