5人旅!

□連絡船リキ号
2ページ/2ページ

エースは船内でボーッとしていた。
旅や旅行関連で船に乗った事は一度もなく、こういう時にどうやって暇を潰せばいいのか判らないのだ。
任務などであれば常に気を張って周囲の警戒をしているのだが、今はそんな場面でもない。
特に何もなく平和な時間。
けれどエースはそんな時間には慣れていなくてどうすればいいか判らず戸惑い、こうして座ってボーッとしていた。
何か暇を潰せるものはないかと考えていると、ジタンが船内に入ってきた。

「あ、ジタン」
「ん?何だ?」
「ジタンは今暇か?」
「おお、暇だぜ」
「なら、少し話し相手になってくれないか?」
「いいぜ!何話すんだ?」

ジタンは気前よく笑って、ひょいっとエースの隣に座る。
エースは少し考えこむと、暇潰しの仕方について率直に尋ねた。

「こういう船で旅とかする時はどうしていればいいんだ?」
「どうしていればって?」
「こう、普通の過ごし方とかそういうのだ」
「船で旅行に行ったりとかした事ないのか?」
「任務以外ではない。というより、旅行自体した事がない」
「あーそうだよな。お前の所、つい最近までそれどころじゃなかったもんな。
 ま、仕方ない!このジタン様がお前に旅の移動中の過ごし方をご教授してやるよ!」
「ああ、宜しく頼む」
「まず、船内で出来る事は寝る事だけだ!」
「は?他はないのか?」
「騒いだら他の人の迷惑になるし、本や字を読もうもんなら酔って吐いちまうぜ?」
「そうか・・・そうだな」
「てな訳で、甲鈑に出るぞ」

立ち上がったジタンに倣ってエースも立ち上がり、共に甲鈑へと出た。














甲鈑に出ると、海の潮の香りとカモメの可愛らしい鳴き声が2人を出迎えた。

「甲鈑でやれる事は色々あるぜ。例えば、そこのティーダたちみたいにブリッツボールで遊ぶとかな」

船の開けた場所ではティーダとクラウドがボールのパスをしていた。
クラウドの船酔いを紛らわすのにティーダが付き合っているのだ。
もっとも、ティーダからしてみれば練習にもなるので、楽しかったりする。

「他にはスコールみたいに海を眺めたり空を眺めたりして風景を楽しむとかな」

ティーダたちの近くでスコールは手すりによりかかり、海や海の彼方、カモメなどに視線を移しながら物思いに耽っていた。
そんな姿が中々様になっており、素直にかっこ良く思えた。

「後は船首近くでタイタニックごっごするとか」
「それはすぐに終わらないか?」
「すぐだけど楽しくていいじゃねーか」
「いや、そうだが」
「てかお前、風景写真とか撮らなくていいのか?」
「それはもう終わった」
「はぇーな」
「他に暇を潰す方法はないのか?」
「女の子をお茶に誘うとかもあるぜ」
「ナンパは無しだ。浮気するなんてデュースに悪いし、そもそも興味もない。。それにガーネットに怒られても知らないぞ」
「ガーネットなら許してくれるさ・・・多分」

言いながらジタンは視線を泳がせる。
それをエースがジト目で見つめると、ジタンはそれから逃れるように階段を上って二階のパラソルのあるデッキの上に寝転がった。

「さ〜て、最後の暇潰しは昼寝だ」
「船内での潰し方と変わらないな」
「ちーげよ。船内での昼寝はただの昼寝だ。ここでの昼寝は、海の潮の香りに包まれた優雅な昼寝だ」
「それは優雅なのか?」

小さく笑いながらエースはジタンの横に寝転がって目を閉じた。
潮の香りと柔らかい風がてても心地良い。

「優雅に決まってんだろー?海の音、潮の香り、カモメの鳴く声、涼しい風。十分贅沢じゃねーか」
「言われてみればそうだな」
「今は戦いとかそんなのしなくていいんだからさ、のんびりしよーぜ」
「ああ・・・そうだな」

柔らかく言葉を返してエースは少しずつ意識を手放していく。
元より寝るのは得意で、昼寝が大好きなエースはすぐに夢の世界へと旅立つ事が出来た。
けれど、甘やかな微睡みの中、エースはジタンの名前を呼ぶ。

「・・・ジタン」
「んぁ・・・何だ・・・」
「また・・・暇潰しに・・・付き合ってくれないか・・・」
「いいぜ・・・」

こうして、2人は海の風に包まれながら緩やかに眠りに就くのであった。













END
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ