企画!

□トラベリング・アイシクルロッジ
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ウィスキーと果実酒、アイシクル産の氷とチョコレートを買った2人は早速宿の部屋で楽しんでいた。

「ヴィンセント!」
「分かっている」

ヴィンセントがウィスキーを一口飲むや否やユフィは早速おねだりをしてきた。
率直なそれに苦笑いしつつヴィンセントはウィスキーを静かに渡す。
瞳を輝かせながらユフィはウィスキーを眺め、カランカランとグラスを揺らして氷の冷たくも美しい音を楽しむ。

「いただきまーす!」

ユフィはニカッと笑うとウィスキーをぐびっと一口飲んだ。
が、すぐに眉間に皺が寄り、渋い顔で小さく舌を出した。

「うえっ、苦い、不味い、ヒリヒリするっ」
「フッ、子供にはまだ早かったようだな」
「どーせアタシはおこちゃまですよーだっ!!」

ぷくっと頬を膨らませて怒るとユフィは口直しにと言わんばかりに果実酒を口に含んだ。
林檎の甘い香りと柔らかい味わいがユフィの舌を優しく包む。
舌のヒリヒリもいくらか和らいだ気がした。

「・・・果実酒はどんな味だ?」
「ん〜?何々?ヴィンセント、もしかして“子供の飲み物”に興味津々な訳?」
「・・・そんな所だ」
「仕方ないな〜。“大人の”ヴィンセントに“子供の”アタシの飲み物を分けてやるよ!」

悪戯っぽい笑みと小さな皮肉を込めてユフィは甘い香りの漂う果実酒が入ったグラスをヴィンセントの前に差し出す。
グラスを掴むだろうと思われたヴィンセントの手は、しかしグラスを素通りして自然な流れでユフィの頬に添えられた。
そうししてそのまま小さな顎へと滑り、クイッと上向けられる。
紅い瞳は―――愉しそうに笑っていた。

「では、遠慮なく頂くとしよう」
「まっ―――」

制止の声はヴィンセントの喉の奥に消えていった。
不意打ちの襲撃に備える事の出来なかったユフィの唇は瞬く間に制圧され、侵入を許し、犯される。
度数の強い熱を帯びた舌が歯列、頬肉、上顎、下顎、舌を余す事なく愛撫してじっくりと味わってくる。
逃げ惑う舌を容赦なく責め立てて吸い上げ、抵抗する力を奪っていく。
ヴィンセントの巧みなキスにユフィの瞳はトロトロに溶け、すっかり虜となっている。
銀色の糸を引きながら離れれば追いすがるようにしてユフィはヴィンセントの首に腕を回して熱くなった体を密着させた。

「ヴィンセント・・・」
「本当にお前は酒に弱いな」

白く張りのある太腿をサラリと撫でれば面白いくらいにユフィの肩はビクビクと跳ね上がり、より体を摺り寄せてきた。

「・・・っ!」
「たっぷりと可愛がってやろう」

ニヤリと口元を歪ませ、火照ったユフィの体を軽々と持ち上げる。
ベッドに向かおうとしたところで華奢な手がヴィンセントの胸元の服をしっかり掴んで動きを止めさせる。

「・・・どうした」
「あそこがいい・・・」

そう言ってユフィが指差したのは、暖炉から少し離れた所に敷かれた白くフワフワとした敷物。
思っても見なかった選択にヴィンセントは思わずキョトンとした表情を浮かべる。

「・・・あそこがいいのか?」
「うん」
「床だから背中を痛めるぞ」
「フワフワで柔らかいしダイジョーブでしょ」
「そうは言っても厚みがないから実質床みたいなものだぞ」
「それでもあそこがいーの!ホラ、映画とかでよくあるじゃん?暖炉の前でするのってさ。あれやってみたかったんだよね〜」
「・・・お前がいいのならそうするが、後悔するなよ」
「判ってるって」

ギュッとじゃれつくように抱きついて来るユフィに仕方ない、と苦笑しつつも要求通りに敷物の上へと進路を変える。
優しくそっと下ろせば、期待を込めた瞳で見上げられた。

「ヴィンセント・・・」

愛おしそうに己の名前を紡ぐ唇に誘われてヴィンセントは体を伏せる。


カラン、と氷の上に乗っていた氷が溶けて滑り落ち、下の氷と重なった。















「背中いた〜い・・・」
「だから言っただろう」

翌日、ベッドの上でうつ伏せになるユフィの背中をヴィンセントが優しくさすっていた。
ユフィの望み通り敷物の上で情事に及んだ結果、ユフィは背中を痛めたのだ。
当然の結果と言えるだろう。

「でもちょっとはロマンチックだったでしょ?」
「悪くはなかった」
「素直に楽しかったって言えよ〜」

ユフィの拳が伸びてきてコツンとヴィンセントの胸にぶつかってくる。
可愛らしい攻撃を仕掛けてきた拳を優しく包んでやり、フッと悪戯に笑って見せる。

「では、“楽しかった”」
「・・・ムッツリスケベ」

ボフッと枕に顔を埋めるユフィだが、黒い髪の隙間から覗く真っ赤に染まった耳がヴィンセントに笑いを誘う。
これはもうしばらく楽しめそうだ。
ヴィンセントは体を寄せると優しくユフィの頭を撫で始めるのであった。













END
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