私立シルヴェール学園

□文化祭
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一般人や生徒たちが行き交う廊下をセフィロス教頭とエルオーネが並んで歩く。
主に女性の視線がセフィロス教頭に集まり、中には黄色い声を上げる者までいた。
けどまぁ、そんな声はセフィロス教頭の耳には入る訳もなく、顔色一つ変えないで歩き進む。

「で?どこに向かっているんだ?」
「G組です。スコールたち頑張ってるかなって」
「・・・」
「あ、おかしな妨害とかしないで下さいね」
「・・・考えておく」

私が止めなきゃ。
強く決意してエルオーネはいつでもセフィロス教頭を止められるように小さく構えた。
















「あ、エルオーネ先生と教頭先生」
「いらっしゃいッス!デートッスか?」
「横暴な主人とそれに従う奴隷だ」
「普通に否定したらどうッスか?つか、横暴な主人はアンタだろ」

教室の前で机と椅子を置いて座っているユウナと着物を着たティーダに遭遇した。
ユウナの机の前にはお菓子や手作りのミサンガやドリンクのメニュー表があり、ティーダの机の前には大きな丸い機械があった。
その機械は察するにわたあめを作る機械のようである。

「わたあめも売ってるの?」
「そうッス!ここだけで売ってるンスよ」
「じゃあ、わたあめとお菓子1つずつちょうだい。いくら?」
「いいですよ、サービスします」
「いいのいいの、遠慮しないで。売上に貢献してあげる」
「エル先生・・・!」
「じゃあ、せめて半額にさせて下さい。スコールにも悪いし、その気持ちだけでも嬉しいです」
「別にいいのに・・・でも、ありがとう」

エルオーネが財布を取り出して会計をしている間にティーダがわたあめを作り始める。
機械の中で割り箸をクルクル回していると、白い綿が徐々に徐々に纏わり付いて来た。
ティーダはわたあめを作りながらセフィロス教頭を見上げて話しかける。

「教頭もどースか?美味しいッスよ!」
「タダで寄越せ、全部だ」
「言うと思ったッスよ!ていうかエルオーネ先生見習えっつの!!」
「私は好きでこうして来てる訳ではない。コイツに無理矢理連れて来られたんだ」
「あっ!私の買ったクッキー食べないで下さいよ!}

エルオーネが購入したクッキーの袋を横から取り上げて封を開けると、セフィロス教頭は勝手に食べ始めた。
横暴もいいとこだ。
それに負けじとエルオーネも手を伸ばしてクッキーをさくさくと食べ始める。
けれどクッキーの枚数は少なく、あっという間に最後の一枚となった。
その一枚をエルオーネが素早く掴み取って口に運ぼうとしたその時―――

グイッ

パクッ

「「「あ・・・」」」

セフィロス教頭がエルオーネの手首を引っ張ると、クッキーを軽く唇で挟んでスッと引き抜いた。
そしてそのままクッキーはサクサクと咀嚼されていった。

「あーっ!最後の一枚!!」
「え?叫ぶとこそっち?」
「アルフォ○トだけじゃ飽きたらず私が買ったクッキーまでも食べるなんて・・・!」
「油断したな」
「覚えておいて下さいよ!!」

食べ物の恨みで燃えるエルオーネだが、ティーダとユウナからしてみれば騒ぐ所はそこではないように思う。
セフィロス教頭に手首を引っ張られてクッキーを食べられた時、唇が指に触れるか触れないかという感じで当たっていた。
彼に惚れている普通の女性であれば卒倒もののラッキーハプニングだが、エルオーネは動じなかった。
むしろ最後の一枚のクッキーを食べられて悔しがっている。

「多少は動揺するもんだと思うンスけどね〜」
「全く異性として見てないか食べ物の恨みが強いのかどっちかなのかな?」
「う〜ん、足して2で割った感じッスかね?」

二人で軽く首を傾げて考えていると話がついたのか、エルオーネがこちらを向いて尋ねてきた。

「ところでスコールはどこ?」
「スコールならリノアと一緒に別のフロアで売り子をやってますよ」
「そうなの?」
「よし、引き離しに行くぞ」
「行きませんよ!人の弟の恋路を邪魔しないで下さい!」
「あ、行ってる傍からスコールとリノアが戻ってきたッス」
「売り終わったのかな?」
「・・・」

スコールたちの存在を捉えると、セフィロス教頭は無言で動き始めた。
その行動を察したエルオーネは慌ててセフィロス教頭の腕を掴んでスコールたちに向かって叫んだ。

「スコール、リノアちゃん、逃げて!今教頭先生がろくでもない事しようとしてるから!!」

(常にろくでもない事をしてるがな)

「ありがとう、エルお義姉ちゃん!行こう、スコール」
「ああ」

心の中で悪態をついてスコールはリノアと共に廊下の角へと消えるのだった。

「チッ、逃がしたか」
「良かった」
「余計な事を」
「その言葉、そっくりそのままホームランで打ち返してあげますよ」
「興冷めだ、他行くぞ」
「あ、待って下さいよ!」

踵を返して歩き出しすセフィロス教頭の後を小走りに追いかけてエルオーネはG組を後にした。
先程とは打って変わってやや楽しげに会話をする二人の後ろ姿を生暖かい目でティーダとユウナは見送る。
そこで教室の扉がガラッと開かれて中からキスティスとエーコがカメラを持って現れた。

「中々の貴重な写真が数枚が撮れたわね」
「だね。やっぱり教頭はエルオーネ先生といる時は見た事もないような行動を取るよね」
「やっぱバッチし撮ってたか」
「撮らずしてどうしろって言うの?」
「撮るは一時の恥、撮らぬは一生の恥だよ」
「そんな諺聞いた事ねーッスよ」
「二人共ほどほどにね」

ユウナは苦笑してそう言った。
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