萌えcanの

□注目のチアガール
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今日は校内ブリッツボール大会の日。
クラス対抗で行われ、各学年で優勝したクラスには焼肉食べ放題への招待が待っている。
これに釣られて全校生徒は燃え上がり、全力を尽くして闘いに挑む。
ユフィたちのクラスもその一つだ。

「頑張れー!」
「ファイトー!」

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競技に参加しない一部の女子はチアガールとなって参加者を鼓舞する。
ユフィもその一人だ。
可愛らしく派手な衣装とその元気さが相まって他のクラスや学年から注目の的となっているが、当のユフィは気づいていない。
それもその筈、今のユフィは応援しながらもヴィンセントに夢中なのだから。

ピッピー!

「7組、1点!」

「よっしゃー!さっすがヴィンセントー!」

ヴィンセントのシュートが決まり、ユフィやクラスが喜びに湧き上がる。
が、別の所からも黄色い悲鳴が・・・。

『キャー!ヴィンセントさーん!!』


(やっぱライバル多いなー・・・)

ヴィンセントは女顔負けのその美しい容姿もさることながら、成績優秀でスポーツ万能、オマケに物静かで大人の色気を持つという色々反則な男である。
ちなみにそんな感じの男子は割といたりするのだが、ほとんどが彼女持ちだ。
その中でもヴィンセントはフリーなので狙ってる女子も多い。
この激しい競争をどうやって切り抜けたものか。

『ただいまより、お昼休憩を開始します。午後の試合は13:00からとします』

「あ、お昼だ。セルフィとリュックとご飯食べよっと」

ユフィの思考は弁当タイムによって切り上げられた。
弁当を持って待ち合わせ場所に行こうといた所で声をかけられる。

「おい、キサラギ」
「ん?」

聞き慣れない声に呼ばれ、振り返ってみるとこれまた見慣れない男がそこに立っていた。
体操服の色から察するに同じ学年の男子のようである。
一体何の用だというのか。

「誰アンタ?」
「お前の隣のクラスのなんだけどさ、ちょっと話があるから校舎裏来てくれよ」
「アタシはないからヤダ」

話があるから校舎裏に来て欲しい、なんてのはもう大体察しがつく。
何度か告白された経験のあるユフィにはこの誘いがどんなものなのか分かっていた。
けれど自分はヴィンセント以外に興味がないので、相手には悪いがそういうのはその場で断ってやり過ごしている。
だから今回も同じやり方で流すだけだ。

「いいじゃねーかよ、悪い話じゃないぜ?」
「知らない」
「じゃあ俺が教えてやろうか?楽しいアソビってのをさ」
「一人でやってなよ。アタシ行くから」
「待てよ、ちょっとは話を聞けよ!」

男は立ち去ろうとするユフィの腕を掴んで引き留めようとする。

「ちょっ、離せ!用はないって言ってんだろ!」
「いいから遠慮すんなって!なぁ楽しい事しよーぜ?」
「一人でしろって言ってるだろ!!」
「そう言わずにさぁ」

「その辺にしろ」

嫌がるユフィに絡む男の腕をもう一人の男―――ヴィンセントが力強く掴む。
見れば紅い瞳は冷たく細められており、怒りの炎すら見えそうな勢いだ。

「ひっ!ヴィンセント=ヴァレンタイン・・・!」

ヴィンセントの存在を認識するや否や男のユフィを掴む腕は弱まり、ヴィンセントはその隙を逃さずにユフィから離した。
そしてユフィを隠すかのように前に立ち、男を見下ろして一言言い放つ。

「・・・失せろ」
「な、なんだと!?テメェ、何様のつもり―――」
「失せろ」

二度目の言葉はとても重く、また反論を認めない圧力があった。
これに圧倒された男は何も言葉を返す事が出来ず、「ちくしょう!」と捨て台詞を吐いて逃げ去った。
男が逃げたのを確認してからヴィンセントはユフィの方を振り返り、安否を確認する。

「無事か?」
「う、うん。助かったよ!」
「昼食は一人か?」
「ううん、セルフィとリュックと一緒に食べるつもりだよ」
「ならば二人の所まで送ろう」
「いいの?サンキュー、ヴィンセント!」

予想していなかったサプライズにユフィは喜び、ヴィンセントと共にセルフィとリュックが待つ場所へと向かった。
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