萌えcanの

□その2
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「ストップストップストップ!ルインさんストップ!!これ必要なんですか!?やる意味あるんですか!?」
「大ありよ?紐が解きにくいとか解きやすすぎるとか確認しなきゃいけないでしょう?」
「マネキンに着けてご自分で確かめればいいじゃないですか!」
「自分だと判断が甘くなってしまうでしょう?第三者の目は大切よ」
「あの・・・からかってませんよね?」
「そんな訳ないじゃない。私は大真面目よ?」

などと笑顔で言いのけるルインだが、その笑顔がなんだか信用出来ない。
ユフィは自分の体を抱きながらそっとメモをルインに無言で突き返す。
が、ルインに同じく無言で押し戻され、何度かその攻防が続く。
しかし、ルインに強引にブラの中にメモを入れられた事によって攻防は強制的に終了した。

「お願いするわね、エレンさん。嘘を書いてもすぐに分かるから」

(駄目か・・・)

この事についてはスピーカー越しにヴィンセントも聞いている筈だ。
どんな顔をしているか判らないが・・・とにかく帰宅したら相談するしかない。

「じゃ、エレンさん、そこのカーペットの上でM字開脚になって」
「はいっ!!?」
「なーんて冗談よ。手を後ろで組んで立っててくれないかしら?」
「は、はぁ・・・」

ユフィが言われた通りに手を後ろで組んで立つと、ルインは棚からスケッチブックとペンを取り出してソファに座った。
そして足を組んでスケッチブックを開くと、ユフィに視線を送りつつスケッチブックに何やら書き始めた。
先程までのお茶目なお姉さんの雰囲気は鳴りを潜め、今ではやり手の女社長が顔を出している。
真面目にしている所を悪いと思いつつもユフィはルインに尋ねた。

「何を書いてるんですか?」
「・・・トナカイをイメージした下着よ。サンタさんのと相性の良いデザインにしようと思ってるの」
「まぁ、トナカイですか」

何度も見比べて確認出来るように自分を立たせた訳か、とユフィは一人心の中で納得する。
しばらく沈黙が続くが、ふとルインがスケッチブックから顔を上げないままユフィに尋ね返した。

「・・・エレンさん、ジムって行ってる?」
「え?」
「貴女の体、理想の体って言ったけど、かなり鍛えないとその体は得られないんじゃないかと思ってね」

ひくっ、とユフィの口の端が疼くが淑女スマイルでそれを回避する。

「それもこれも全部家事のおかげですよ。家事って結構体力使うんですから」
「んー・・・家事ねぇ・・・」

疑わしげなその返しにユフィは内心緊張するが、冷静さを装う。
果たして次はどんな言葉が投げかけられてくるか。
予想される質問に備えてあらゆる答えを用意するもルインはニッコリと笑ってそれを裏切る返しをした。

「それだけじゃない気がしたけど、よくよく考えたら夜の運動があったわね」
「夜の・・・運動?」
「やだわエレンさんったら、そこまで言わせちゃうのかしら?旦那様とベッドで過激な運動でもしてるんでしょう?」

夜の運動、旦那様とベッド。
ルインが暗に語るその意味を察したユフィの顔はみるみるうちに赤く染まっていき、ついでに想像してしまって狼狽えた。

「か、かかかかかか過激な運動だなんてそんな・・・!!」
「でも淡白って事はないでしょう?エレンさんの旦那様、外見に寄らず結構できそうだけれど」
「なな、何言ってるんですか!!?」

もしもそれが本当だったらどうする。
結構できる、という事はそれ相応の体力が要求される筈だ。
今の内に体力をつけておくべきなのだろうか、つけるにしてもどのくらいつけておけばいいのか。
しかしこういう事に関しては全くの未経験だからもしかしたら想像を絶するほどの体力を―――。

(ってそうじゃないそうじゃない!!何考えてんだアタシ!!?)

ブンブンと頭を左右に振って邪念を払う。
あまり初な反応をしていると夫婦設定を疑われかねないので、なんとかそれっぽく話を繋げようと試みる。
どこまで誤魔化せるか判らないが。

「た、確かにあっさりしてる訳じゃないですけど・・・」

自分で言ってて恥ずかしくなり、どんどん顔が熱くなっていくのが分かる。

「でしょう?でないと・・・ねぇ?あ、今日その下着着たまま旦那様と夜をお楽しみなってよくってよ?」
「もう許して下さい、ルインさん!」

本当に許してほしかった。
でないと邪な妄想がどんどんと膨れ上がってしまう。
なんとか話題を変えようとユフィは部屋に視線を巡らせる。
と、独立マテリアが装飾として使われている豪華な置き時計が目に入った。
マテリアを飾りに使うのもそれはそれで良いと心の中で関心しつつも、それについて尋ねる事にした。

「そ、それよりルインさん!あの時計はなんですか?マテリアが使われてるみたいですけど」
「ん?あぁ、アレは私が気まぐれで作った物よ」
「気まぐれで作ったんですか!?」
「一時期工作に嵌っててね。気の向くままに作ったものよ」
「凄いじゃないですか!ルインさんって芸術の才能がありますね」
「ウフフ、おだてても何も出ないわよ、エレンさん」
「謙遜しなくてもいいんですよ。でも、これだけ出来がいいとルファンに狙われないか心配ですね」
「むしろ狙ってきたら私はルファンに心底がっかりするけどね。素人の作品に値打ちを見出すなんてバカにも程があるわ」
「そうでしょうか?私には普通に売ってもかなりの価値があると思いますけど」

これはユフィのちょっとした本音でもあった。
実際にこんな時計が売られていたらかなりの値段が設定されていただろう。
それほどまでにルインの作ったという時計は完成度が高く、且つ芸術性と神秘性があった。
しかしルインは興味なさげに話を返すだけだった。

「それでも素人の作品である事に間違いないわ。いくら見てくれが良くても職人の魂には勝てない」
「はぁ・・・そういうものなんですか?」
「そういうものよ」

ルインの意外な拘りにユフィは内心驚く。
こういった事には興味がない、或いは自慢してくるものだと思っていたが案外そうでもなかった。
なんというか、職人などに対して敬意を払っている風には見えなかったのだ。
人は見かけによらないというものだろうか。
そんな風に思っていると、ルインがまた悪戯な笑みを浮かべて楽しそうに口を開いた。

「ところでエレンさん、参考までに聞きたいんだけど、やっぱり脱がせやすい下着の方が何かと都合はいいものなの?」
「いい加減セクハラで訴えますよ!?」

その後もユフィはルインにちょくちょく弄られ、その度に慌てたりツッコミを入れたりするのであった。
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