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□サイスが如く
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今日も今日とて何も変わらない一日。
朝飯を終えたみんなの食器を鼻歌を歌いながら洗って手分けして掃除して自由時間。
んで、適当に昼飯食ってまた自由時間になって三時くらいになったら洗濯物を取り込んで畳む。
夜には夕飯食って食器洗って風呂入ってちょっと遊んで寝る。
これがアタシの日課だ。
別に不満なんてないし、家事とか面倒だけど飯はクイナが作ってくれるし、他の事もそれほど大変じゃないからいい。
自由時間だって好きな事が出来るから、文句つけたらそれこそ罰あたりってもんさね。

けど、アタシのこんな日々に新たな項目が追加される日が来ようとは思いにもよらなかった。
あれは朝の掃除を終えたある日の事だった。

「は〜あ、これで終わりっと。リビングでゲームでもすっかな」

アタシは今やってる『龍が如し』をプレイするべく、リビングに向かった。
寄り道が本編状態だけどそんなん他のゲームでもよくある事だ。
さて、今日はキャバ嬢の誰を攻略しようかね〜、なんて思いながらリビングの扉を開けてみると・・・

「ん?」

ソファーに横たわって眠るヴィンセントと、ヴィンセントの寝顔を眺めるユフィがいた。
別にこの二人の組み合わせは珍しくない。
よく一緒にいるし、ユフィはヴィンセントに懐いてる感じだ。
だから二人が一緒にいてもおかしくないし、今みたいな状況も不思議じゃない・・・筈なんだけどねぇ・・・。

(なんかいつもと違くないか?)

なんつーか・・・ユフィのヴィンセントを見る目が違うっつーか雰囲気が違うっつーか・・・。
あ、ユフィがこっち見た。

「さ、サイス!?いつからそこにいたの!?」
「ついさっきだ」
「あ、ああ、そう」
「ユフィもヴィンセントも今日は仕事休みか?」
「うん。シフトで今日は休みなんだ」
「ふーん」

アタシは静かにドアを閉めながら中に入り、ゲームを用意する。
KYだのなんだの言われてもあたしゃ知らないよ。
別に二人共そういう雰囲気じゃないしね。
それにユフィはアタシがこれからゲームする事に興味津津だ。

「何やんの?」
「『龍が如し』」
「お〜、あれね。熱いストーリーでいいよね〜。寄り道も作りこまれてるしさぁ」
「だな。キャバ嬢イベントとか笑っちまうよな」
「そーそー!あの渋い木龍さんがキャバ嬢口説くのとかギャップがあるっていうかさ」

ロード画面が切り替わるまで『龍が如し』を語ってたけど、ちょっとカマをかけてみたくなった。
アタシらしくないねぇ。
他人の恋愛なんて全く興味がないってのに・・・心に余裕があるからか?

「木龍さんは割かしアタシの好みだね。ユフィはどうだ?」
「うーん、好きっちゃ好きだけどタイプって訳じゃないかな〜」
「ユフィの好みのタイプってのはなんなんだ?」
「強くて一緒にいて楽しくてちょっと大人な人かな」
「ヴィンセントみたいな?」
「そうそう、ヴィンセントみたいな―――」

そこでユフィはアタシの罠に気づいて言葉を詰まらせた。
まさかこうも簡単に引っかかるなんてね。
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