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□サイスが如く
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「ほ〜、ヴィンセントが好みのタイプね〜」
「べ、別に好みのタイプってだけで好きって訳じゃないからね!?」
「ホントか〜?」
「ホントだよ!」
「じゃあ何でさっき寝顔をじっと見てたんだよ?」
「うっ・・・見てたの?」
「バッチリな」
「あれは・・・その・・・何となくだよ」
「何となくね〜?」

多分ユフィ本人は気づいてないだろうけど、顔が赤くなってる。
こりゃ脈ありかもな。

「ユフィ、いい加減ゲロっちまったらどうだ?ヴィンセントの事好きなのか?」
「・・・それは―――」

ユフィが白状しようとした瞬間、ヴィンセントがむくりと起き上がった。

「・・・」
「ヴィ、ヴィンセント・・・!」
「悪ぃ、起こしちまったか?」
「いや・・・今何時だ?」
「10時36分」
「そうか。そろそろ出かけるか」
「昼飯はどうすんだ?」
「外で食べてくる。14時くらいには帰ってくる」
「あいよー」
「行ってらっしゃーい。お土産宜しくね〜」
「買ってこれたらな」

ヴィンセントは小さく笑ってリビングを出てった。
それから数分経ち、ユフィがアタシの肩を掴んでガクガクと揺らしながら叫ぶ。

「ねぇねぇねぇねぇ!!もしかしてアタシたちの話し聞かれちゃった系!?ねぇ!!?」
「ゆ、揺らすな!落ち着けって!!」

なんとかユフィの手を外して落ち着かせる。
ふぅ、参ったぜ。
さて・・・

「まぁ、とんでもねータイミングで起きてきたけど大丈夫なんじゃねーの?」
「わかんないよ!?アイツ結構敏感だから最初から起きてたかもしんないよ!!?」
「だったらもっと早く起きてんじゃねーか?流石のアイツでも女の会話を盗み聞きなんかしないだろ」
「でも、起きるに起きれなかったとかさ・・・」
「めんどくさいねー。後でさり気なく聞いとくから待ってな」

元々アタシが蒔いた種だしね。
あーあ、やっぱ首なんかツッコむんじゃなかったよ。














夜になって食器洗いを終えたアタシは早速ヴィンセントに昼間の事を聞きに行った。
ヴィンセントは書斎にいて、幸いトレイやエースはいなかった。
ラッキーだね、神はアタシに味方してるよ。

「ヴィンセント、ちょっといいか?」
「何だ?」
「アンタ、朝のアタシたちの会話聞いてたか?」
「朝の会話?」
「リビングでのアタシとユフィの会話だよ。アンタ寝てただろ?」
「ああ、あの時か。全く聞いていないが」
「本当だね?」
「ああ。私にしては珍しく熟睡していたからな」
「嘘ついてたらアタシの自慢の鎌でその首を切り落とすよ」
「誓って言おう。会話は聞いてなかったと」

そう言うヴィンセントの瞳をアタシはじっと見つめた。
紅の瞳は逸らす事も揺らぐ事もしない。
この男、結構凄い裏仕事をやってたみたいだから嘘をつくのも上手なんだろうけど・・・ま、大丈夫だろうね。
ユフィもヴィンセントはいやらしい嘘をつくような男じゃないって言ってたし。
ここは信じてやるか。
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