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□星の海岸
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星がキラキラと輝く夜。
こんな綺麗な夜空を狭いベランダの中から眺めるのは勿体無い。
どうせなら開放感溢れる誰も居ない静かな浜辺で星空に思いを馳せながらじっくり堪能したい。

(なんてクサイ事言ってみたりして)

クスッと笑ってエルオーネは鍵を持って部屋から出た。
ガチャッと鍵をかけるのと同時にバタンと扉が閉まる音がして振り向くと、丁度セフィロスオーナーが部屋から出て来た所だった。

「あ、オーナー!これからどこか行くんですか?」
「散歩だ」
「奇遇ですね、私もこれから散歩に行こうと思ってたんですよ」
「そういえば今日は散歩に出ると良くない事が起こると占いで言っていたからやはりやめるとしよう」

閉めたドアをまた開けて中に入ろうとするセフィロスオーナーの腕をエルオーネはガシッと力強く掴む。

「占いなんか信じる質じゃないくせに何言ってるんですか!!?」
「よくよく考えればお前という奴に出会った事自体が不吉だ」
「失礼な!ていうか、それで言うならもう不吉な事は起きたからそれ以降他の不吉な事は起きませんよ!」
「どうだろうな。嫌な事は連続して起きるものだ」
「そう言わずに!」

その後20分の言い合いの後、セフィロスオーナーが渋々折れてくれた事もあり、二人は浜辺へと足を運ぶのだった。












自分たち以外の人影がない浜辺に響くのは砂浜を踏むサクサクという音と、寄せては返す波の音。
星の光を反射してキラキラと輝く海は近くで見るとより一層美しく、幻想的に見えた。
これが恋人同士や想いを寄せあっている男女であればムードも盛り上がるというものだが、勿論二人はそんな関係ではない。
ましてムード云々などこれっぽっちも考えていない訳で。

「綺麗ですね。海に星の光が反射されてて・・・ハッ!スターオー―――」
「それ以上言うな」

ドスッ(チョップを下される)

「いたっ」
「バカが」
「でも言いたくなっちゃうじゃないですか」
「言いたくなるのはお前くらいなものだ」
「そんな事ないですよ・・・多分。それにしても、流れ星とか落ちてくれないかな。そしたらもっと綺麗なのに」
「・・・」
「あ、メテオは落とさなくていいですから」
「チッ」

(危なかった・・・)

セフィロスオーナーの左手に握られているブラックマテリアに視線を送り、エルオーネは内心息を吐いた。
まぁ、いつもの事なのでもう慣れているが。

「もう、物騒な発想をする人はこの星の海でその汚れきった魂を洗ってきて下さい!」

ドンッ!とエルオーネはセフィロスオーナーの背中を押すが、セフィロスオーナーが動く事はなかった。
何度も背中を強く押すがビクともしない。

「ちょっと、ここは押されて海に飛び込むところですよ!?」
「飛び込むならお前が飛び込め」

さっとセフィロスオーナーが横にズレた事によって、エルオーネはバランスを崩し、前のめりに倒れかけた。

「きゃっ!?」

眼前に迫る星の海。
泳いだらどんな気持ちがするのだろうと思っていたりしたけれど、普通に服を着たまま泳ぐ気などさらさらない。
というよりも既に風呂は済ましてあるのに、ここで海に飛び込んだらまた風呂に入らなければならなくなる。
諸々の覚悟をしてギュッと目を閉じるが―――

「・・・っ!」

ぐいっと痛いほどの力で右腕を引っ張られ、セフィロスオーナーの元に引き寄せられた。

「これで1つ貸しだ」
「貸しって、オーナーが避けたからこうなったんじゃないですか!」
「最初に仕掛けて来たのはお前だ。悪いのはどう見てもお前だと思うが?」
「うぐっ・・・ちなみに要求は?」
「明日の朝食のトロピカルヨーグルトを寄越せ」
「ええっ!?嫌ですよ!凄く楽しみにしてるんですから!」
「お前の大切な物を奪う喜びをくれないか?」
「ここでその名台詞を吐かないで下さいよ!」

本人たちは大した事のないやり取りだが、傍から見れば可愛い痴話喧嘩。






その痴話喧嘩を遠くから眺める男が二人―――。


サイファー「俺はよぉ、満天の星空を眺めながらロ〜〜〜マンチックな気分に浸りたかったのによぉ・・・
      何であんなもん見せつけられなきゃならねーんだ。エル姉ちゃんだけならまだしも、よりよってオーナーもいやがる」
ルーファウス「日を改めるんだな」








END




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