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□ふたつくっつけた布団
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本日はウータイのユフィの家でお泊まり。
ウータイは独特の文化を持つ国で、他とは違う所が多々ある。
それは畳であったり民族衣装であったり食文化であったりなど様々である。
違いを見つける度に驚いたり感心したりするのだが、今回もまた一つ小さな驚きがあった。

「布団はくっつけて寝るんだな」
「え?うん。嫌?」
「そんな事はない。単純に驚いただけだ」

旅をしていた頃にユフィの実家で寝泊まりして、その時に布団をくっつけて寝るというのは知った。
しかしその時は部屋が狭いから仕方なくくっつけているのだと思っていたが、どうやらそうでもないようである。
今いるユフィの家の部屋は広くはないけれど布団をくっつけなければならないという訳でもない。
それなのに何故くっつけるのか疑問に思っていると、それを汲み取ったユフィが説明した。

「離して敷く事もあるけど、それは他人と相部屋になって離す時か修復不可能な夫婦がする時くらいだよ。
 最も、修復不可能な夫婦で部屋に余裕がある時は別々の部屋で寝るけどね」
「成る程」
「それに布団をくっつけると寝るスペースが広がった感じがするし、床に落ちる事もないしね」
「お前はよく落ちるからな」
「落ちないよ!つか、そんなに寝相悪くないし!」

意地悪く笑ってからかうと予想通りユフィは怒った。
そんな怒った顔さえも愛しくて、悪かった、と言いながら頭を撫でる。我ながら重症だ。
布団がくっついているのをいい事に本能が暴走しないようにと自制をかけるヴィンセントだった。











そして夜。
窓越しに微かに聞こえる虫の声を子守唄にヴィンセントは舟を漕ごうとしていた。
その時にもぞもぞと何かが自分の布団に侵入する動きを察知して目を開く。
見てみれば、隣のユフィがヴィンセントの布団の領域を侵してきていたのだ。

「・・・どうした?」
「くっつけた布団ってさ、こんな風にすぐに夜這いする事も出来るんだよね」

寝る前の布団を敷いてた時の話しの続きをしているのだろう。
察しのついたヴィンセントはユフィを腕の中に迎え入れると抱きしめた。

「つまり抑える必要はなかったという事か」
「何の話?」
「こちらの話しだ。それよりも夜這いして来たのは勿論遊びのつもりではないだろう?」
「あったりまえじゃん」

ユフィは挑戦的に笑うとヴィンセントの唇に触れるだけのキスをした。
それに対してお返しだと言わんばかりに同じようにヴィンセントも軽く触れるだけのキスをする。
最初こそは本当に軽く触れて離れるだけの唇が段々と時間を置いて離れるようになっていく。
そうして何回目かのキスの時には、それは既にじゃれ合うようなキスではなく、熱烈に愛し合うキスへと変わっていた。













「あうっ!あ、あ、あっあっ―――!」

びくびくっとユフィの身体が跳ねて絶頂を迎える。
けれどヴィンセントはまだだった。

「っ・・・落ちる心配をしなくていいから何度転がっても安心だな」

ユフィの身体を反転させて次の体勢を取るヴィンセント。

「そ、そういう恥ずかしいこっ、ぁあああっ!」

ユフィの羞恥心を込めた抗議は挿入によって遮られるのだった。













翌朝、雀が楽しげに鳴いている時にヴィンセントの意識は眠りの世界から浮上してきた。
心地の良い疲労感と充足感が体中を満たし、安らかな気持ちにさせる。
その気持ちをもっと充実させる為に、情事の翌朝恒例の口付けをしようと目を開いた時だった。

「・・・ん?」

なんだかフサフサとしたブラウンの毛が目一杯に広がり、そこにある筈のユフィの顔を拝めない。
それどころかその毛玉はうぞりと動くと、愛くるしい顔をこちらに向けてニャァと鳴いた。

「にゃぁ・・・」

ヴィンセントが呆気にとられて毛玉――ー猫を見ていると、反対側のユフィが小さく身動ぎをして目を覚ました。

「んん・・・ヴィンセント・・・ん?あれ?」
「ニャー」
「あれま、入ってきちゃったのか」

ユフィは猫の背中を優しく撫でてやりながら襖に目をやる。
襖は猫が通れる程度に開いていたので、恐らく少し開いていた隙間から引っ掻くなり何なりして入ってきたのだろう。
そして自分とヴィンセントの顔の間が狭かったからそこに横になったのだと考えると苦笑を禁じ得なかった。

「ラブラブのユフィちゃんとヴィンセントの間に突如として割って入ってきた猫!
 美少女ユフィちゃんは一人と一匹の間で揺れ動くのであった!」
「それは大変だ。寝取られる訳にはいかんな」

ユフィの冗談に付き合ったヴィンセントは小さく笑いながら半身を起こして視線をユフィに向けた。
言わんとする事を察したユフィが後ろへとずれると、ユフィがずれた分だけ空いたスペースにヴィンセントが潜り込む。

「浮気は許さんぞ?ユフィ」

冗談交じりに言って、ようやっと恒例の朝の口付けを交わす。
けれどそれはいつもと違って熱く濃厚で、昨夜と同じようにユフィの身体を火照させる。
更にその後のユフィの身体をなぞるヴィンセントの手がそれを助長した。

「んふ・・・ユフィちゃんを取られたくないからって朝から盛るなよ・・・」
「煽ったのは誰だ?」
「ヴィンセントが勝手に煽られたんじゃん」
「なら、やめるか」
「・・・ダメ。身体熱くなっちゃったんだから責任取れよ」
「全く、ワガママな娘だ」

苦笑交じりに溜息を吐いて優しくユフィの頭を撫でながらもう一度口付けると、ヴィンセントはユフィを可愛がり始めた。
それこそ、くっつけた二人分の布団を一杯に使って―――。











END

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