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□目覚まし時計
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本日は洗濯日和な晴天。
加えて休日なのもあってのんびりと眠る事も出来る。
けれどまぁ、睡眠時間にも限りがあるもので・・・

ピピピッピピピッピピピッ

起床の時間を懸命に知らせる長方形の時計。
そんな働き物(者)の時計を影が覆い、ボタンを押す―――

ガシャァア!

が、無惨にも時計は息の根を止められてしまった。

「・・・」

時計の時を永遠に止めた張本人はもぞもぞと布団の中に潜り、再び眠りの世界へと旅立つ。
その時、布団から僅かにのぞいて見えたのはいつもの黒髪ではなく、紫色っぽい毛であった。



その後・・・



「・・・」
「アンタまた寝ぼけてリミットブレイクしたんだ」
「・・・すまない」

ただのゴミへと成り下がった時計を挟んで二人は正座をしていた。
ヴィンセントは少し申し訳なさそうに俯いている。

「まぁ今に始まった事じゃないからもう良いけどさ。でもせめて力加減とか出来ない?」
「眠くて無理だ」

ヴィンセントは寝ぼけてリミットブレイクする事があり、力加減もしないまま時計を破壊する事が多い。
その所為で一体いくつの時計が犠牲になったことか。
こういうこともあって時計は100均で買うようにしている。

「また買ってこなきゃね〜」
「すまない・・・」
「いいよ、アタシだってやらかす事あるし」

ユフィは笑って許し、けれど罰として時計の処分を命じた。









さて、ユフィが時計を壊す場合だが、こちらもかなりのものである。

ジリリリリリリリリリ!

起床の時間を知らせる、典型的だけれども可愛らしい丸い時計。
ベルの音を止めようと布団の隙間から細い腕が伸びてウロウロと空間を彷徨いながら時計を探す。
ユフィの手は時計の手前を行ったり来たりするだけで一向に時計に届きそうにない。
その間にも時計は鳴り続けてユフィとヴィンセントの眠りを妨害する。
そして―――

ガァアアン!

面倒になったユフィは思いっきり手をスイングさせて時計を投げ飛ばした。
持ち前のスナップもあって時計は遠くに飛ばされ、壁に激突して床に着地すると共に悲痛な音を上げた。
そして打ちどころが悪かったのか、時を刻む音が聞こえなくなる。

「・・・」

この間のヴィンセントと同じようにユフィは布団に潜って再び睡眠を貪る。
それとはまた別の形で時計も永眠するのであった。



そして・・・



「・・・」
「・・・」

また同じように壊れた時計を挟んで二人は正座をしていた。
今度はユフィが申し訳なさそうに俯く。
時計盤を覆うプラスチックのプレートのひび割れが痛々しい。

「・・・ごめん」
「・・・まぁ、お互い様といった所だな。だが、スイングする癖はどうにかならないものか?」
「ん〜、アタシとしては自分のとこに落として止めようって考えなんだよね」
「顔に当たったらだろする?あまりそういう事はするな」
「んー」

ユフィを心配した上での注意を受けた後、壊れた時計はユフィの手によって処分された。
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