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□目覚まし時計
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そしてとある日。

ピッピッピッピピピピピピピピピピピピ

新参の四角い時計が朝の時間を二人に教える。
今日もいい天気だ、散歩日和だと。
しかし、こうして任務を遂行していても辿る末路は同じで―――

ガシャァアン

バシッ

哀れ四角い時計はガリアンの拳に潰された後、ユフィのスイングで壁に激突して床に散った。



反省会・・・



目も当てられない程にほぼ原型を留めていない時計を挟んで二人は俯いていた。
いらないコンビネーションをしてしまった自分たちを恥ずかしく思っている程に二人は己を責めていた。

「・・・またやっちゃったね」
「・・・ああ、今度は二人でな」

それ以上の言葉は出てこない。
ただただ沈黙と時間だけが過ぎていく。
二人は無言のままだし、時計も言わずもがな。
正座した足が痺れ出しそうになった頃、漸くユフィの方から口を開いた。

「・・・やっぱさ、スマホのアラームにしようよ」
「・・・」

スマホのアラームという言葉にヴィンセントは無言で難色を示す。
その反応に対してユフィはやや厳し目の口調でこう言った。

「あのさぁ、音もデカイし普通に起きられるって。それに手元に置けるから壊す事もないしさ。
 なんだったらクラシックとかにするよ?メロディー」
「・・・いまいち信用出来んな」
「そんなのやってみなきゃわかんないじゃん!」
「・・・今度お互いの休日が重なった時にでも―――」
「いいから明日からやるよ!!」

ユフィによってアラームで起きるという有無を言わさぬ決定が下された。
こうなってしまったらこの決定はもう覆す事が出来ない。
観念したように溜息を吐いてチラリとユフィのスマホを見る。
設定をすればお気に入りのメロディが流れ、細かく時間設定が出来るというアラーム。
しかしヴィンセントはスマホのアラームをいまひとつ信用しておらず、起きれるかどうか疑問であった。
なので、ユフィの決定を受け入れる代わりにとある提案を持ち込んだ。

「一つ提案があるんだが」
「何?この決定は変えないよ?」
「勿論そのつもりでいる。だが、もしもで私が起きれなかったらまた時計を購入する。
 起きる事が出来たらこれからもアラームをかける事にする。どうだ?」
「まぁ別にいいけど、時計はヴィンセントが自分で買ってよね」
「分かっている」

交渉は成立し、今夜はユフィのスマホのアラームを設定して眠る事となった。
ヴィンセントだけは若干の不安を胸に抱いて―――。



そして翌日・・・


チュンチュンと雀のさえずりがベランダの窓越しに微かに響く。
しかし熟睡している二人の目覚まし代わりにはなりそうになかった。
そんな雀たちに代わってアラームのクラシックなメロディーが二人を眠りの世界から呼び覚ました。

「ん〜・・・朝か〜」
「・・・意外に起きれるものだな」
「でしょ〜?だから今日からアラームね。後で設定の仕方教えるから」
「ああ、頼む」

こうして、ヴィンセントとユフィの家で時計の犠牲が出る事はなくなった。











END
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