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□今夜の夕食
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※時系列 これ→(未定)→雨漏り







「アンタさぁ、ちゃんとご飯食べてる?」

昼休み、WROの休憩室にてユフィはおにぎり(梅)を食べながら向かいに座るヴィンセントにそう尋ねた。
カツサンドを食べていたヴィンセントは一瞬ユフィを見て止まったが、首を傾げて答えを返す。

「・・・今お前の目の前で食べているが?」
「そーじゃなくて家でだよ、家で!」
「食べている」
「どんなの?」
「・・・作るのが面倒で弁当などで済ます事が多いな。後は食べない事もままある」
「食べろよ!作れよ!そんなんだからアンタはいつまでたっても顔色が悪いままなんだよ!」
「悪いか?」
「悪いよ!アンタよく平気でいられんね」
「案外なんとかなるものだ」
「はぁっ・・・アンタって奴は・・・」

ユフィは大きく息を吐いておにぎりの最後の一口をモグモグと食べて飲み込むと、熱いお茶を啜った。

「しゃーないから今日からアタシがアンタの家に行って夕飯作ってあげるよ」

そのセリフを聞いた瞬間、コーヒーの入った紙コップを掴もうとしたヴィンセントの手が止まった。
そして大きく目を見開いて意外そうな顔でユフィを見た。

「作る・・・?お前が・・・?」
「何?何か文句でもあんの?」
「・・・料理出来るのか?」
「は?そりゃ出来るよ、アタシ一人暮らししてるんだし」
「・・・」
「何だよその顔、まだ信じてないなー?それを証明してやる為にも尚更今日はヴィンセントの家に行くからな!」
「待てユフィ、年頃の女性が軽々しく男の家に上がるものではない」
「なーに言ってんの、アタシとアンタの中じゃん!それよりさ、何食べたい?オーソドックスにハンバークとかがいい?」

ヴィンセントの言葉に全く耳を傾けずユフィは話を進める。
こうなってしまってはもう聞く耳を持たないのでヴィンセントはユフィの好きにさせる事にした。









そしてその日の夜、ユフィは宣言通り食材を手に持ってヴィンセントのアパートにやってきた。
ヴィンセントの住んでいるアパートは築うん十年もしてそうなくらい古く、文字通りボロボロだった。

「・・・言っちゃ悪いけどさ、アンタとんだボロアパートに住んでるね」
「口を慎め、壁が薄いからな」
「でもここ二階でしょ?」
「この間何気なく通販のテレビを見ていたら大家がその話題を出してきたんだ。私が見ている事前提でな」
「うっそ〜?ま、いいや。それより作ろっか」

言ってユフィは持ってきた手提げ袋からエプロンを取り出して着始めた。
白黒でレースの付いた可愛らしいエプロンで中々にユフィに似合っている。
ユフィはヴィンセントの前で軽やかに動いて自分のエプロン姿を見せながら尋ねた。

「どうどう?アタシのエプロン姿可愛いだろ〜?」
「そうだな」
「そこ!ぞんざいに答えんな!」
「それより私は何を手伝えばいい?」
「ったく・・・まぁいいや。ヴィンセントは鍋にこれとこれ入れて混ぜてて」
「コーンスープか?」
「そ。今コンソメをレンジで温めて溶かすから、終わったらそれも入れて混ぜてね」
「判った」
「コンソメ混ぜた後は塩と胡椒入れて味付けね」
「ああ」
「アタシはその間にサラダとハンバーグ作ってるから」

ヴィンセントに指示を出すと、ユフィはスーパーの袋からハンバーグやサラダの材料を取り出して準備を始めた。
手早くハンバーグの元と肉、卵を混ぜて捏ね、まとめて形にすると空気を抜いて熱したフライパンの上に乗せる。
更にそのフライパンに蓋をして焼いている間にサラダを切って盛り付けをするなど時間を無駄にしない。
テキパキと料理を作っていくユフィの手際の良さにヴィンセントは目を見張り、思わず言葉を漏らした。

「・・・本当に料理が出来るんだな」
「ん?」
「いや、手際が良いと思ってな」
「そりゃぁ何回も作ってるもん、手際良いに決まってるっしょ!それよりスープの方はどう?」
「味付けはしたが、お前的にはどうか見てくれ」

お玉でスープを掬って小皿に入れ、ユフィに手渡す。
ユフィは小皿を傾けて啜ると、OKの形を指で作ってウィンクする。

「うん、バッチリ!コップに入れてテーブル置いといて。こっちもハンバーグ出来上がるからさ」
「ああ」

コーンスープをコップに移し入れてテーブルに運び、他にもご飯を食べる為の準備をする。
そうした用意をしている間にユフィの方は目玉焼きとウィンナーを焼きあげていて更に盛りつけていた。

「よっし、いっただっきまーす!」
「いただきます」

食事の席についた二人は食べる前の挨拶をするとご飯を食べ始めた。
ヴィンセントは手始めにハンバーグを一口食べてみた。

「・・・」
「どう?味の方は?」
「ああ、美味い。よく出来ている」
「へっへ〜!だろ〜?」
「これならどこの嫁に行っても申し分ないな」
「親父とおんなじ事言ってるよ」
「フッ、そうか」
「ま、アレだったらヴィンセントのお嫁になってあげてもいいけど?」
「考えておくとしよう」

ヴィンセントは冗談っぽく笑ってプチトマトを口の中に放り込んだ。










<続く>

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