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□丸のついたカレンダー
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ヴィンセントはカレンダーの前で右手に青ペン、左手に手帳を持ちながらカレンダーと手帳を見比べていた。
そして手帳で予定が入っている所は空白に、予定がない所にはやや大きめの青い丸をカレンダーに書き込む。
休みになるかどうか判らない所には三角を書き込んだ。
書き込み終わってざっとカレンダーを眺めると、ヴィンセントの休みは飛び飛びだったりとまばらだった。
まぁ任務などがあればそうなるのも仕方ない。

「今月の休みはどんくらい?」

バッとユフィが後ろから抱きついてきてカレンダーを覗く。

「あ〜、まばらだね〜」
「お前は?」
「えーっとね〜」

ユフィはポケットから手帳を取り出すとヴィンセントと同じようにカレンダーと手帳を見比べ始めた。
そして手帳に差していた赤ペンを取って青い丸の中にレ点を書き込んむ。
こちらもまばらで、ヴィンセントと被っているのはほんの2,3日程度だった。

「こんなもんかな」
「見事に休みがズレてるな」
「ねー。まぁ任務が一緒の日もあるけどあんまり二人っきりにはなれないしなぁ」
「休みが重なっている日は有意義に過ごさねばな」
「だね!何する?」
「今から予定を立てるのか?」
「いーじゃんいーじゃん!モチベーションになるしさ!でさ、飲みに行くとかどーよ?」
「それは夜の楽しみだな。昼間はどうする?」
「映画とか行く?後は家でのんびりするとか一緒にゲームするとか」
「買い物はいいのか?」
「あ、行きたい行きたい!行きたいとこ沢山あるんだよね〜」
「となると、荷物持ちコースか」
「へへ、宜しく頼んだよ!ヴィンセントは行きたいとこある?」
「本屋に行きたいな」
「んじゃ、本屋にも行こっか」
「ああ」
「それから―――」

ユフィは次の月のカレンダーを捲ると16〜18日の三日間に赤丸を書き込んだ。

「この三日間有給とってどっか旅行行こうよ」
「何故、この三日間なんだ?」
「あー、やっぱり忘れてんなー?まぁ、アタシもつい最近思い出したからあんまヴィンセントの事言えないけどさ」
「?」
「来月の16日はね、アタシ達が付き合って丁度一年になるんだよ」

ヘヘ、とはにかむように笑うユフィにヴィンセントはただただ驚きに呆然とするだけだった。
ユフィと付き合い始めた頃はちゃんとユフィを守れるか、ユフィを幸せにできるかと悩んでいた。
けれど気付けば一年もユフィと上手くやっているではないか。
喧嘩する事もあれどその度にお互いの絆は深まり、また愛情も深まっていった。
人を愛するなどもう出来ないと思っていたのに一年もユフィを愛する事が出来たのだ。

「で、その記念と称して旅行でもどうかなって。どーよ?」
「―――そうだな。最高の旅行にしよう」

柔らかく微笑んでユフィの頭を優しく撫でてやれば、満面の笑みを返してくれた。

「よしっ!じゃあ早速明日リーブのおっちゃんに交渉しに行こう!
 アタシたちここんとこ働き詰めだったしきっと三日間くらい休みくれるよ!」
「だといいがな」
「はいそこ!もっと前向きに考える!」

ビシッと人差し指をさしてくるユフィの手をどけて「それよりも」と話を変える。

「風呂に入ってきたらどうだ?」
「あ、うん。入ってくる」

ユフィはヴィンセントから離れると下着とパジャマを取りに部屋に戻り、それから洗面所に入っていった。
一連の流れを見届けた後、ヴィンセントはカレンダーを捲って改めて記念日を眺める。
ユフィと付き合って一年となる日。
ユフィを愛して一年になる日。
それを記念して旅行に行く特別な日。

『モチベーションになるしさ!』

ふと、ユフィの言葉が頭の中を過る。

「・・・モチベーション、か」

フッとヴィンセントは笑みを溢して自身の手帳に記念日の日付を書き込むのであった。












END

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