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□タバコとライター
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自宅のテーブルの前でユフィはじっと銀色のライターとタバコを見つめていた。
このタバコとライターは、今日ヴィンセントが潜入捜査をするのに使ったものだ。
ヴィンセントがタバコを吸う所を見るのは初めてで、なんだか新鮮だった。
それに加えてどこか色気があり、思わず見惚れたほどだ。

「吸ったらダメだぞ」

横から大きな手が伸びてきてタバコとライターを回収してしまう。
ヴィンセントの手だ。
ユフィがタバコとライターを見つめていたから吸うのではないかと勘違いをしたのだろう。
その勘違いを晴らすべくユフィは反論をした。

「吸わないっての。ただ見てただけだし」
「そうか。それでもこれはお子様の手の届かない所に置いておかないとな」
「子供扱いすんな!」

ユフィが怒ると、ヴィンセントは小さく笑い声を漏らした。
ヴィンセントはユフィと付き合うようになってからよく笑うようになった。
勿論、他の感情も見せるようになってきている。
感情表現豊かなユフィと共にいたため、影響を受けているのかもしれない。

「それよりさ、ヴィンセントって昔はタバコ吸ってたの?なんか凄く慣れた感じで吸ってたけど」
「タークス時代に少しな」
「今は?」
「今回のような仕事以外では吸いたいとは思わないな。それに、タバコ臭いのはお前も嫌だろう?」
「うん、ヤダ」

眉根を寄せてユフィはストレートに答えた。
そんなユフィの反応に小さく苦笑してヴィンセントはタバコとライターをしまい、ユフィの隣に座った。

「もしもさ、アタシがタバコ吸ったらどうかな?カッコいいかな?色っぽい?」

聞かれたヴィンセントはタバコを吸っているユフィを頭の中に浮かべてみた。
が、どれだけ頑張っても「カッコいいユフィ」や「色っぽいユフィ」が想像出来ず、むしろ反抗期の不良娘というイメージしか沸かなかった。
ヴィンセントは思わず吹き出して肩を震わせる。

「ククッ・・・!」
「あっ!笑ったな!?そんなに似合わないかよ!!?」
「ただの反抗期の不良娘でしかないからな」
「なんだよそれ!?バカにしてさぁ!絶対にそんな事ないってのを証明してやるよ!」
「冗談だ、落ち着け」

ヴィンセントがしまったタバコを取りに行こうとするユフィを腕の中に閉じ込めてその動きを封じる。
「はなせ〜!」と暴れるユフィを涼しい顔で押さえながらヴィンセントはふと、彼には珍しく面白い事を思いついて口にした。

「そんなに吸いたいならタバコチョコを買ってやるからそれで我慢しろ」
「タバコチョコ!?ふざけんな!!子供扱いすんなって言ってんだろー!!」

思った通りの反応にヴィンセントはまた笑い声を漏らす。
からかいはもうしばらく続くのであった。












END

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