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□テーブルとイス
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「どっちがいいか迷うね」
「ああ」

現在、ユフィはヴィンセントの部屋でヴィンセントと一緒に家具のパンフレットとにらめっこをしていた。
半年前、めでたく恋人となった二人はそろそろ一緒に住もうかと話し合い、それにあたって新しい家具を買おうという事になった。
手始めとしてテーブルとイスを選ぶ事になったのだが、茶色のテーブルと黒っぽいテーブルのどちらにするか現在迷っている。
イスの方もデザインがいいものばかりで、中々決められないでいる。
長く使う物だから妥協する事は許されないのだ。

「茶色のテーブルもいいけど、この黒っぽいテーブルも捨てがたい・・・」
「想像してみるのはどうだ?これから住む家にこのテーブルが合うかどうか」
「うーん・・・・・・どっちも合う、かな」
「ならば一旦他の家具を見て、後で改めて見るのはどうだ?そしたら決まるかもしれん」
「そーだね。えーっと、次のページは・・・食器棚かぁ。アタシもう決めてるのがあるんだけどさ」
「何だ?」
「これ、この棚。綺麗でオシャレで使い易そうなんだよね。ちょっと値段張るけど」
「私は全然構わないが、いつから決めていたんだ?」
「パンフレット貰いに行った時から。一目惚れしちゃってさ〜」
「なるほど。お前がそれがいいのなら私もそれでいいぞ」
「エヘ、ありがと、ヴィンセント」

ユフィは嬉しそうに笑みをこぼすと、赤いペンで写真の棚を丸く囲った。

「えーっと、次はソファか。どれにする?アタシはフカフカなのがいいんだけど」
「そればっかりは店で実際に触ってみないと分からんな」
「じゃあ色は?」
「黒だ。お前は?」
「この薄い黄緑色がいいんだけど、なかったら黒でいいかな」
「では、ソファの色はその2色の方向でいこう」
「だね。えーっと、次は・・・」

ペラっと次のページを捲ると、そのページにはベッドの写真が載っていた。
シングルからキングサイズまで様々な大きさのベッドが―――。
それを見た途端、ユフィは顔を赤くして慌てた。

「あ、あぁ!ベッドか・・・ハハ・・・」

ユフィはまだ、ヴィンセントと体を重ねた事がない。
付き合ってまだ半年なので、当たり前といえば当たり前なのだが、でももうそろそろとユフィは思っていたりする。
それに丁度引っ越すのだから。
でも、シングルベッドにしようと言われたらどうしよう。
その時は何と言えばいいのだろうか。

「ベッドはさ・・・どーする・・・?」
「当然、ダブルだ」

サラリと言いのけてヴィンセントはユフィの手から赤ペンを取ってダブルベッドに丸を付けた。
予想していなかったそれにユフィは驚いた顔のままヴィンセントの方を見る。
そんなユフィにヴィンセントは涼やかに問うてきた。

「それともお前は嫌か?」
「ないない!そんな事ない!!大賛成!!」

ブンブンと勢い良く首を縦に振ってユフィは大肯定する。
ヴィンセントが一緒のベッドで寝てくれるのだ、これほど嬉しい事はない。
なんだかこのテンションならテーブルとイスも決められそうだ。
ユフィはささっとページを戻すと、再度黒のテーブルと茶色のテーブルを見比べた。
そして―――

「うん、決めた!茶色のテーブルにしよ!そんでイスはこっち!それでいい?」
「それは構わないが、一応買う時に店でもう一度確認するんだぞ」
「もっちろん!ヴィンセントも一緒に確認してくれるよね?」
「ああ、勿論だ」

頷いて、ヴィンセントは優しく目を細めた。
ユフィと一緒に、自分たちの生活に関わる物を選びに行く。
それが彼にとっても嬉しいのだ。

「エヘヘ、楽しみだね!」
「そうだな」

二人は引っ越しの日を心待ちにするのだった。











END

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