お題倉庫

□ひとつの風景画
1ページ/1ページ

つくづくヴィンセントは絵になる男だと思う。
休日の午後、ソファに座って本を読むその姿はまるで一つの風景画のよう。
絵画として売り出したらきっとかなりの値段で売れるに違いない。

「・・・どうした?」

ユフィの視線が気になったヴィンセントが尋ねるがユフィは「なんでもない」と返す。
それでも尚も注いでくる視線を気にしつつもヴィンセントは本に目線を落とす。
優雅に本を読んで時折コーヒーを飲むこの姿をWROとかのヴィンセントに好意を寄せてる女性たちが見たらうっとりとした溜息を吐く事だろう。
けれど、そんな姿を見れるのは恋人のユフィだけ。
そしてそんな芸術性ある姿を、そんな風景を壊せるのもユフィだけ――ー。

「ヴィンセント」
「なん―――っ」

答えようとして突然唇を塞がれる。
あまりに急な事に驚いたヴィンセントだったが、すぐに妖しく笑って尋ねた。

「どうした?」

さっきと同じ尋ね方。
余裕のある笑み。
腹が立って、もっと壊してやろうとムキになってもう一度キスをする。
今度は舌を挿れて巧みに絡め取って翻弄する・・・なんてのは理想で、絡め取るのが精一杯。
ヴィンセントは全然余裕だ。
その証拠に片手でユフィを抱きしめ、もう片方の手で頭を撫でた後にキャミソールの肩紐を弄んでいる。

(ムカつく・・・)

キュッとヴィンセントの着てるシャツの裾を掴んでいっきに脱がす。
ヴィンセントはまだまだ余裕の笑みを称えているが、先程のような日常風景画的な芸術性はなくなった。
が、しかし脱がした事によって今度は裸体美なるものが顔を出してきた。
実験によって縫合の跡があちこちに残る上半身をヴィンセントは醜いと言うが、それでも溢れるエロさがそれをカバーしている。
本当にズルい男だ。

「っ・・・ん、ふ・・・んっぅ・・・」

縫合の跡に舌を這わしてヴィンセントから教えてもらったキスマークの付け方を実践する。
一回目と二回目は上手く出来なかったが三回目でようやく付けられるようになった。
この感覚を忘れないように他の所にもどんんどん付けていく。
鳩尾を下り、逞しい腹筋を通り過ぎて更にその下へ―――

「ユフィ」

ズボンに手をかける寸前に声をかけられて顔を上げる。
ヴィンセントは瞳の奥に静かに情欲の炎を揺らめかせながら一つの提案を持ちかけた。

「賭けをしないか?」
「賭け・・・?」
「三分間、お前が一度もイかなかったらお前の勝ちだ、好きにするといい」
「もしもイっちゃったら?」
「私の勝ちだ。私の好きにさせてもらう」
「いいよ、乗った。絶対にアタシが勝ってヴィンセントを美味しくいただいちゃうんだから」

おおよそ女性の言う言葉でもないと思うが、挑戦的な表情と必死になってる瞳がそれらを打ち消す。
そして同時に「かかった」とヴィンセントは内心ほくそ笑んで勝利宣言をする。

「なら、始めるとするか」














三分どころか一分も持たずしてユフィはイってしまい、ベッドに連行されてヴィンセントに美味しくいただかれてしまった。
というのもヴィンセントが本気を出してしまったからであり、最初からユフィに勝ち目なんてなかったのだ。
ヴィンセントが本気を出してくる事なんて大体予想出来た事なのにそれでも挑んだのは生来の負けず嫌いによるものだろうか。
まぁ、賭けを持ち込んだのもユフィのこの負けず嫌いを見込んでの事だったのだが、予想通り釣れて大満足である。

(それにしても・・・)

風に揺れるカーテンを背景に穏やかな表情で眠るユフィのこの姿は何かの絵画でありそうな図だ。
絵にしたらかなりの価値が出るであろうこの寝顔は、けれど自分だけのもの。
自分だけが見れて、自分だけが壊せるこの寝顔―――。

「・・・フッ」

ヴィンセントは薄く笑うとユフィの体にかけられたシーツを捲った。











END

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ