お題倉庫
□捨てられない包装紙
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「えっへへ」
最近の寝る前のマイブーム。
それはサイドテーブルの引き出しから綺麗に折り畳んだ包装紙を取り出すこと。
「ふっふーん♪」
淡い色から濃い色まで様々なオレンジ色の横縞が印字されている包装紙。
誕生日の時にヴィンセントが可愛らしいタオルの三枚セットを贈ってくれた時にそれを包んでいたものだ。
普段であれば包装紙なんてものは開封したらすぐにゴミ箱に捨てる。
でも、これだけは特別。
「ぷっくく・・・!どんな顔してあの店に入ったんだろ?」
この包装紙を使っている雑貨屋に心当たりがある。
ガッツリ女性向けの店で男性はあまり立ち寄らない店だ。
それこそヴィンセントなんかは興味無くて素通りするのだが、ユフィの誕生日というのに限ってはそれもしなかったようで。
どんな心持であの店に入って選んでくれたのだろうか。
店の雰囲気に圧倒されたか。
それとも戸惑ったか。
或いはいつも通り大した感想を持つ事もなくプレゼント選びに移ったか。
この三つの中では三番目が有力だろう。
そんな風に想像して一人ニヤニヤと笑うのが最近のユフィの就寝前の日課だ。
「この赤いリボンは・・・まぁ流石に無難にってところかな」
よく贈り物に貼られる、金色のシールで交差する部分を止められた小さなリボン。
包装紙に貼られていたリボンの色は赤で、赤と言えばヴィンセント。
でも意識して赤のリボンを選んだ訳ではないだろう事は想像に難くなかった。
単純に包装紙の色を考えて下手に青や緑にするより赤の方が合うだろうと思って選んだのだろう。
たとえそうだったとしてもユフィには嬉しい事だった。
何故ならヴィンセントを連想出来るワンポイントが増えたのだから。
「さ、そろそろ寝ようかな」
再び引き出しを開けて包装紙をしまい、布団に潜る。
ヴィンセントへ募るフワフワで幸せな雰囲気に包まれながら今日もユフィはぐっすりと眠るのであった。
END