自警団
□こんな始まり
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ギルド施設の一部であるリラックスホールにてヴィンセントは優雅な午後を過ごしていた。
熱いブラックコーヒーを飲みつつ読書に耽るのが彼の楽しみの一つである。
遠くから熱い眼差しを送ってくる女性たちの視線さえなければもっとゆっくり出来ていたのだが・・・。
ヴィンセント(贅沢は言ってられないか)
気にしない事に決め、ヴィンセントは本の世界へと入り込んで行く。
心の在りよう、存在の証明、眠りによって生まれるもの・・・一つ一つが深く、改めて考えさせられる。
そうした知識の渦の中、ヴィンセントはまた一歩真理に―――
ドドドドドド・・・
真理に―――
ドドドドドドドド!!!
真―――
アーヴァイン「ヴィンセントーーーーーー!!!!」
真理に辿り着く事はなかった。
ヴィンセント「・・・どうした、アーヴァイン」
小さく溜息をついてヴィンセントはパタンと本を閉じた。
アーヴァイン「聞いて!もう聞いて!あんまりなんだよ〜!」
ヴィンセント「何があった?」
アーヴァイン「僕さぁ、今日から一人暮らしするでしょ?」
ヴィンセント「そうだったな」
アーヴァイン「今日早速アパート行ったらさ・・・潰れてた」
ヴィンセント「・・・」(←掛ける言葉が見つからない)
アーヴァイン「なんか、株に手を出した大家さんが大失敗したみたいで、急いでアパートを売ったっぽい」
ヴィンセント「敷金礼金などは取り戻せたのか?」
アーヴァイン「うん、流石に返してくれた・・・けど、住む家がないよ〜」
ヴィンセント「無いことはないんじゃないか?」
アーヴァイン「ギルド周辺の家は全部満室だし、後はギルドから遠くなっちゃう」
ヴィンセント「成る程・・・」
アーヴァイン「だから一生のお願い!ヴィンセントの所に居候させて!!
家事とかも手伝うし家賃とかも半分出すからお願い!」
ヴィンセント「そんな事をしてもらわなくとも居候するのは一向に構わないが」
アーヴァイン「それじゃ僕の気が収まらないからするよ。いいでしょ?」
ヴィンセント「お前がそう言うのなら・・・」
アーヴァイン「じゃあさ、早速ヴィンセントの家に行っていい?」
ヴィンセント「ああ」
ヴィンセントが住んでるマンション
ヴィンセント「部屋はお前がよく泊まりに来た時に貸してたこの部屋でいいか?」
アーヴァイン「全然いいよ!ありがとうね〜」
ヴィンセント「まぁ、この家の使い勝手も分かっているから教える事もあまりないか」
アーヴァインはヴィンセントの家に度々泊まる事があったので、ヴィンセントの家の事は大体把握していた。
お泊りから居候にシフトチェンジした程度である。
しかし、アーヴァインにはある野望があった。
アーヴァイン「あのさ・・・ヴィンセント」
ヴィンセント「セルフィを呼ぶのは構わないが、私が任務で留守にしている時にしてくれ」
そう、アーヴァインの野望というのはセルフィを家に呼んでお泊り会をする事だった。
本当だったら新しい家に呼ぶつもりだったのだが、それがダメになってしまったのでは仕方ない。
アーヴァイン「本当にありがと〜!恩に着るよ〜!でもさ・・・失望されないかな?」
ヴィンセント「私の家に呼ぶ事がか?」
アーヴァイン「ううん、そういう事じゃなくて、新しい家がダメになって親友に泣きついたとかさ」
ヴィンセント「セルフィがそんな事で失望したりする筈がないだろう」
アーヴァイン「だよ・・・ね」
ヴィンセント「それよりも料理などを振る舞って中身をアピールしたらどうだ?」
アーヴァイン「それもそうだね。その為にも頑張らないと!」