長編小説〜歌え、叫べ、ケモノ唄〜
□プロローグ 始まりと再会
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「……………はぁ…」
ライブ会場の待ち合い室、僕はただひとり楽譜達とにらめっこしていた。
「…緊張するなぁ…楽譜なんて見てらんないよ…」
僕は楽譜を揃えて端へ寄せ腕で枕を作り机に伏せた。僕は月眺 凪、今日は歌い手としてデビューするためにこの会場で歌を歌うわけだけど…。
「………緊張するなぁ…ん?」
ポケットに手を入れると紙のようなものがあった。
「あっ、朝入れてきたんだっけ?緊張ですっかり忘れてたよ…」
紙は一枚の写真、茶色い獣人が二人互いに殴りあっている画像だ。
「フフ…変な顔だな……天照…元気なのかなぁ…」
僕には双子の兄弟がいる。月眺 天照というのだが、去年辺りに家を飛び出して以来生きてるのか死んじゃってるのかわからない状態…あれ?去年だっけ?
『がチャ!バン!』
「おーい!凪!時間だぞ!」
「うわぁ!鵜飼さん!ノックぐらいしてくださいよ!」
扉が突然開き、そこには普通の男性が立っていた。彼は鵜飼 旬さん見た目はかっこいいおじさんだが実年齢は26歳である。
「なんだ?いけない事でもしてたか?」
「いけないことなんてしてないですよ!いたずらなんてそんな子供なこと!」
僕が膨れっ面で言うと鵜飼さんは頭をかいて苦笑した。
「あっ、あぁ…そうだ!もうリハーサルが始まるぞ!」
「はい!」
楽譜を持とうとすると、鵜飼さんは申し訳なさそうに言った。
「今日の曲、おまえが歌うところほとんど変更になったからそれはいらねぇわ」
「え゛?」