短編夢小説
□隣の人。
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『日吉。』
「…なんだ。」
日吉はとても冷たいけど、こっちを向いて返事をしてくれているところが、彼の優しさを表していると思う。
『……いや、特に何もないや。』
「はぁ…。」
日吉はすごく呆れた顔をしているんだろう。
そんなこと見なくてもわかる。
無駄にずっと隣の人をやってる訳ではないのだ。
…声が聞きたかっただけ。
そう言ったら、日吉はどんな顔をするのだろうか。
怒るのだろうか、呆れるのだろうか。
…怒られるのもいいかもしれない。
そう思ってしまった私はMなのだろうか。
…自分がMだと気づいたところで、自分に向けられていた視線に気づいた。
…日吉だ。
『………。』
「なぁ……。」
どうしたの、と声をかけようとしたとき、日吉の方から声をかけてきた。
『ん?』
「なんでもない。」
なんなんだよ、気になるじゃないか。と言おうとすると、「お前が先にやったんだろ。」とでも言わんばかりの顔をされる。
やられたらやり返すってことか。
古い。
「お前こそ…。」
なんで名前呼んだんだ。
そう日吉の声が聞こえた気がした。
今だったら言ってもいいかもしれない。
何故かそう思った。
『声、聞きたかった…。』
呟いただけ、だから多分日吉には聞こえていないだろう。
でも日吉の顔を見ると何故か赤く染まっていた。
(何故だろうか。)
それを知るのはまた別のお話。