メイン♪(長編)【その包帯を風に乗せ】

□暗闇
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痛い。


痛い
痛い

いたい
イタイ…。



何故、こんなにも痛い。
死ぬ。
死んでしまう。






…イヤだ。
死にたくない。
死にたくない。
誰か、誰か助けて。


「…っ…ぅあ…」

無理だ。声が出ない。

出るのはうめき声。



「ぁ…っ…」
動かない。体が動かない。



(だ、…誰か)


イヤだ!!!
嫌だ嫌だ嫌だ!!!!

死に、たく…ない


「…おい、」

(!!!!!)

「…お前、もしかして生きてんのか…?」

顔も上げられない痛みの中。頭上から声が降ってきた。
低い、男の声だった。


「……っあ…ぁ」


「!!生きてんのか?!スゲーな…。よく生きてんな…」


(助け、て…くれ、るのか…?)

天の救いかもしれな…

「…でも、もう無理だろ。すぐ死んじまうなこりゃ。」

見えないから顔は分からないがふってきた冷たい声は怖かった。

(!!!)

「ぁぁ…っ!ぅ!…」
嫌だ!死なない!!死ぬもんか!!
嫌だ。嫌だ!!

動かない体を必死に動かす。


「…!…まだ動けるとはたいした女だな…」

「…っい」

「ん?なんか言ったか?」

男はしゃがんだ。
そして、動けない少女の口元に耳を寄せた。

「…っ…ぅぐ!……
し、死なっ!…ない!!」

力を振り絞って吐き出すように叫んだ少女。

「!!!…」

男は目を丸くしてその女を見た。


「っはぁ!!…うぅ!!…ぁ」
死にかけても、死にたくないと強く願う少女を見た。


「…分かった。」

「…っ…?」

そういうなり男は少女を丁寧に素早く持ち上げた。

「!!…ぅ、うぁ!!…」
持ち上げられたことによって生じる新たな痛みに目を見開いて抗う少女に

「動くな。我慢しろ。少しすれば俺の家に着く。そうすればできるかぎりの治療をしてやる。それまで我慢しろ。」

「っ…ぐっ!!」

あまりの痛みとかすかな安堵で少女は意識を手放した。


静かになった彼女を抱えて男は
無表情に歩いていった…。

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