メイン♪(長編)【その包帯を風に乗せ】

□謎
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「あー、疲れた」

独り言をいい、椅子に腰掛ける。

タバコを吸う気力も残っていない。

それもそのはず。もう夜中だ。


今日は朝から依頼があったから病院に向かった。
朝から嫌な予感がしていたがそれが綺麗に的中し、
今、まさに天国へと向かう患者はやはりあの男に邪魔されこの世へ戻ってきた。

そして、いつものようにあの男の天才的な手術により患者は助かりハッピーエンドだ。

何が、ハッピーエンドだ。助かれば幸せなんて。
そして帰り際に発せられた
「これ以上人を殺すな!!」
という罵声。

その罵声を背中に帰ろうと思ったのだが、なぜか歩きたい気分になって歩いていたところ海が見えてきたので
もっと近くで見たいと思い
岩場を降りていったところであの女を見つけたというわけだ。

皮肉なもんであの男の言葉どおり殺さず家に持って帰ってしまったのだ。


「…」
しかしあの女。本当によく生きていたな。あれほどの傷を負ったら普通は即死のはずなのに。

「おい」

あの治癒力は異常だ。
今までに聞いた症例の中であの傷で生きていた者は…

「おいってば!」

「!!!」

考え事をしていて気がつかなかった。
後ろから声がした。

…後ろから?

バカな!今この家にはユリもいないのにいったい誰の声が聞こえたと言うのだ!

驚いて後ろを振り返ったら目の前に顔があった。

「うわぁ!」
おもわずみっともなく叫んでしまった!

「…え?驚きすぎじゃない?」

…そこにいたのは俺のリアクションがおもしろかったのかクックッと笑っている(失礼なヤツだ)包帯まみれのあの女だった。
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