鴻門之会

□犬を飼う?
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鴻門の会から2週間たったある日のお昼過ぎ


沛「ん?」


大広間前を通った沛公は、中なら聞こえる話し声にふと足を止め大広間に入った

中に入ると、一般兵が3人と樊カイが何やら話していた


沛「何してんだ?」

「あ、沛公様。」
「お疲れ様です。」


ヒョコっと現れた沛公の方を向いた一般兵3人と樊カイ

その樊カイの手には……

沛「………犬?」

樊「はい。」


茶色い子犬がいた


「どっかから入って来たみたいなんです。」

沛「へぇ〜。」


脇の下あたりをつかまれプラーンとしてる子犬に、沛公は右手を近付ける

子犬は少しビクつきながらもペロッと沛公の指を舐めた


沛「ははっ!樊カイ俺にも持たせて!」 


半ば強引に樊カイの手から子犬を取り上げると、腕を上に伸ばして子犬を掲げる


沛「うわぁ、ちっせぇし軽い〜。」


と言いながら、子犬を上に掲げたままクルクルとその場で回り始めた

数回回り、パッと樊カイの方に顔を向け止まり、少々高い声で口を開いた


沛「ねぇユパ様?この子、私が貰ってもいいかしら?」

樊「どこの谷の姫さんですか。」


樊カイの冷たい目と、兵士3人の苦笑いを受けた沛公だが、その目はナ○シカのようにキラキラとしている


「えっーと、……この犬本当に飼うんですか?沛公様。」

「でも捨てるのはどうよ?」

「だからって飼うか?」


兵士達が「どうします?」と子犬を未だに持っている沛公に問う


沛「うーん…‥…飼っちゃ「ダメです。」


飼っちゃう?と言おうとした沛公の言葉を遮ったのは


張「その子犬は飼えません。」


大広間の入り口からこちらに歩いてくる張良だ


沛「いつからいたんだ?」

張「今さっきです。」

沛「そっか。で、なんで飼っちゃダメなんだよ。」


合流した張良に疑問を投げかけるが、その疑問に張良より先に樊カイが口を開いた


樊「ただでさえ手間がかかるのがいるのに、これ以上世話出来ない。」

張「簡潔に言うとそういう事です。」


そう言った2人の目線には


沛「え?何かもう飼ってたっけ?

あ!伝書鳩の事か?」


”手間がかかる”の原因がキョトンと首を傾げていた


《《《あぁ、手間がかかるのって……。》》》


そして兵士達3人は全てを悟った

ーーー


沛「で、どーするかだが………。」

その後、ひとまず兵士3人を仕事に戻したあと

沛「何で俺の部屋?」

沛公と樊カイと張良と犬は沛公の私室に円くなるように座っていた

張「大広間は共有の場です。子犬があちらこちらで粗相をされても困りますし、仕事部屋で書類などを荒らされても困りますから。」

沛「俺の部屋だったら荒らしても小便してもいいってことか。」

樊「よく分かりましたね。」

沛「分かりたくなかったけどな!!」


3人が話しているその頃、子犬は脱ぎっぱなしだった沛公の寝間着を噛んで遊んでいた

それに気づいた張良は


張「ダメですよ。」


離そうと寝間着を軽く引っ張ると、子犬は「引っ張りっこなら負けん」と言うよに更に強く寝間着を噛み、引っ張り始める

が、持ち直そう(噛み直そう?)とした時、張良が強めに引っ張った

寝間着は子犬の口から離れたが


張「すみません、沛公様。少々伸びてしまいました。」

沛「俺の寝間着ー!!」


右袖がデロ〜ンと伸びてしまう結果に終わった

因みに、この寝間着は下ろしたての新品だったとか

ーー


沛「…………何か、湿ってる。」

樊「唾液ですね。」


無事に?寝間着を奪還出来た沛公


張「さて、話を戻しましょう。」


そう言った張良の膝の上には子犬がちょこんと座っている


沛「捨てる訳にも行かないよなぁ。

………あ、そうだ。」


と呟くと思い立ったように机に移動して、何やら書き始めた


沛「…よし、これでいいか。」


書き終わった紙を折り曲げる


沛「じゃあ、出してくる!」


紙を持って部屋から出て行った


張「手紙…ですよね?」

樊「恐らくな。」


数分後……


沛「ただいまー!」


元気に沛公が戻ってきた


樊「手紙ですか?」

沛「そうそう。犬飼わないか?って手紙出してきた。」

張「どなたにです?」

沛「ん?誰って………………」
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