鴻門之会

□犬を飼う?
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場所は変わり、項王城


荘「トットロ♪ト〜トッロ♪」


空の湯のみを3つお盆に乗せた項荘が、鼻歌を歌いながら外に面している廊下を歩いていると、フッと何かに気づき空を見上げた

お盆を左手だけに変え、右腕を斜め上へと軽く上げると、バサバサと何かが項荘の右腕に止まった


荘「配達ご苦労様。」


それは、背中にリュックのような物を背負った鳩

鳩は器用に項荘の腕の上で回ると、背中のリュックを見せる

一旦お盆を床に置き、リュックを開け中の手紙を取り出す


荘「項王様宛て?誰ッスかね…………。」


差出人が書いてないか、手紙を裏返しにすると案の定、右下に差出人と思われる名前が書いてあった


『沛公』


荘「………………。」


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王「お茶まだかなぁ〜。」

范「そうですね。」


ところ変わって、ここは仕事部屋


バーン!!と扉が開いた


荘「項王様ー!范増さーん!」


部屋に入ってきた項荘の手にはお茶……ではなく、右手に丸まっている紙、左手には鳩を抱えていた


范「遅いぞ項荘!
……って伝書鳩か。誰からだ?」

荘「えっと〜……それが沛公さんなんスよね。」


少し困ったように笑って手紙を見せる項荘


范「沛公だと!?」


その名を聞いた途端に、キッ!と睨み付ける范増


王「へぇ〜。何だろうね?」


対して項王はニコニコとしている


王「はい、項荘朗読〜。」

荘「あ、はい。えーと………。」



『犬飼いませんか?
     沛公より』



范「…………はぁ!?何だそのふざけた文書!!」


バンっ!!と机を叩いて立ち上がる


荘「そう書いてあるんッスよ!!それに、まだ続きが!」

范「続きだと?」


『追しん、この前は勝手に帰ってごめんね。』


荘「…って、名前の下の余白に小さく書いてあります。」


そう言うのが先か、バッと范増は項荘の手から手紙を奪い取り、書かれていることを自分の目で確かめる

そこには確かに『犬飼いませんか?沛公』と割と大きな字で書いてあり、下の余白5cmぐらいの隙間に『追しん、この前は勝手に帰ってごめんね。』と小さく少々潰れた字で書いてある


范「完全に追伸書く気無かったじゃねか!!」


それは、始めたから『追伸』を書こうと思っていたのではなく、最後の最後に無理やり詰め込んだ感が醸し出されていた


荘「項王様、どうするんスか?飼います?」

王「あははっ、飼わないよ。
ってことだから、范増返事しといてね。」

范「はい。」


そう返事ながらグシャリと手紙を片手で潰し、ボッと手の中で燃やした


王「それより、お茶は〜?」

荘「あっ、やべっ!」


項王にそう言われて「今持って来るッス!」と言って再び項荘は部屋を出て行った


一方范増は机の引き出しから紙を取り出し、返事を書く準備をしている


王《あ、そうだ。》


そこで何か思いついたような項王は、范増と同じように机の引き出しから紙を一枚取り出し、サラサラと何かを書き始めた

数分後

書き終わった范増は、筆を置くと手紙を折る


范「では、出して来ま「待った。(王」


手紙を伝書鳩につけてこようと立ち上がった范増だったが、項王の制止がかかった

項王は持っていた筆を置くと、紙を四つ折りし、范増の方に笑顔で差し出した


王「はい。これも一緒に送っといてね。」
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