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□僕がいるよ
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寝る前ふと携帯を開くと新着メール一件の文字が
もう夜も遅い時間になるのにいったい誰だろう
大した用事じゃなかったら放置しようと心に決めつつメールを開く



“大形くん起きてますか”



二、三分前に届いたばかりの黒鳥さんからのメールを
この僕が放置なんてできるはずない
先ほどまで感じていた眠気はどこへやら
完全に目がさえてしまった僕は少し迷った末黒鳥さんへ電話をかけることにした
さすがにこんな短時間で寝てるなんてことはないだろうと思ってたけど本当にその通りで
数回コール音がしたのち彼女の声が聞こえた



『お、大形くん……』



「黒鳥さんどうかしたの」



『えっと、そのっ』



電話がかかってくるとは思ってなかったんだろう
携帯越しにも黒鳥さんが慌てふためいている姿が目に浮かぶ
そんなところも可愛いと素直に言えるようになったのはつい最近のことで
真っ赤になる黒鳥さんをみてちょっと口に出すのが憚られる気持ちを抱いてしまうのはまあ僕だって思春期の男だと言うべきか



『………笑わない?』



「話してみなよ」



そもそも黒鳥さんのことをこの僕がどうして笑うんだと昔一度言ったところ
小学生のころはよく笑われましたよと言われて何も言えなかった
僕としては本意じゃなかったし、何よりもう時効な気もするんだけど
案外黒鳥さんは根に持つタイプだ



『……こわい夢をみたんです』



「夢?」



『大形くんがどんどん遠くなるんです』



もしかしてそれで僕に連絡してきたのかい?
僕がいなくなるのが怖くて
夜中だと分かっていても




―――そんなの反則だよ
可愛すぎるだろ黒鳥さん
そんな可愛らしい理由をこの僕が喜びこそすれ笑うなんて絶対有り得ない
それより今すぐ黒鳥さんの元へいって抱きしめたいと思ってしまった僕の気持ちをどうにかしてくれないか



『………大形くん?』



そんな僕に甘えてるみたいな声出さないで
黒鳥さんが思うより遥かに僕は黒鳥さんが好きなんだから
ギリギリのところで耐えている思いが溢れてしまう



「大丈夫、僕は黒鳥さんのそばにいるよ」



ほんとは黒鳥さんの部屋まで行って慰めてあげたいけれど
それはいろんな意味でマズいから自重している
だから今はこの距離で我慢してね黒鳥さん



ほかでもない君のために

(何であんなに可愛いんだろう?)






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