その他

□だからぼくはむなしさのかたまりを抱きしめた
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僕には好きな人がいる
もう、ずっとずっとだ
だけど僕の気持ちは伝わる気配はない
僕の必死のアピールでさえも彼女は僕のことなんてまるで眼中にないかのように本当に華麗にスルーされる
それでも尚諦めることなどできないのだから僕は筋金入りの馬鹿なんだろう






今日も今日とて僕は亜衣を送って帰る
本当は僕の家は正反対なのはもうすでにバレている
だったら僕の下心もとい亜衣のことが好きだって気持ちも伝わりそうなものだけど、亜衣はすこぶる鈍いからそんなことは有り得ない




「ちょっとレーチってば!
聞いてるの!?」



考え事をしながら歩いていたせいか、僕としたことが亜衣の話を聞いていなかったみたいだ



「悪い岩崎、もう一回言って」



「…………そんなんだから知性が零とか言われるのよ」



「何だよそれ!
大体俺の名前は麗一だ!」



「あんたなんかレーチで十分よ!」



「どういう意味だよそれ!」



「そのくらい自分で考えたらっ!?」




自分でも訳が分からないまま彼女と喧嘩が始まっていて
こうなった以上多分僕も亜衣も引けないんだろうなと冷静な頭の隅で考える
せっかく亜衣と2人っきりなのになんでこんな事になったんだろう



「もういいっ!
レーチなんて知らないっ!!」



亜衣の顔はこれ以上ないってくらい真っ赤で
彼女はそう言ったかと思うとダッシュして自分の家の方へと向かっていった


彼女の妹の岩崎麻衣ならともかく亜衣なら僕が走れば追いつけるはずだったけど僕はそうしなかった
かといって自分の家に帰るのも気が引ける
しばらく一人になりたかった僕はとぼとぼと辺りを歩くことにした





思えば、
いつだって僕は亜衣を苛立たせてばかりだ
そりゃ亜衣にかっこいいとこ見せたくて文化祭実行委員に立候補したりもしたさ
だけど全体として亜衣の中での僕は全身校則違反の問題児の上にムカつくやつでしかないんじゃないか?




――そりゃそんな奴よりは夢水先生の方がいいよな




亜衣が夢水先生に惹かれているのは知っていた
夢水先生もどうやら満更でないみたいなのも
僕は勝ち目のない戦に挑んでるんじゃないかともう何度も考えてる



諦めろと頭の中の冷静な僕は言うけれど
そうやって諦められるほど簡単な気持ちでもない



こんなにも近くにいて、こんなにも惹かれているのに諦めるなんてできるはずもない





日々奪われる、恋心
(虚しささえにも慣れてしまった)




title*ねむりのよろこびのなかで
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