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□コレクション願望
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綺麗なものはとっておきたいものだ
海辺で拾った貝殻しかり、お釣りで渡されたピカピカの五百円玉しかりだ
とっておいても仕方がないかもしれない
だけどそれを手放すのには大いに抵抗がある
だから俺の机の引き出しには貝殻の入った箱があり、財布の中の五百円玉はいつまでも居座り続ける



「綺麗だな黒鳥は、」



だから俺が心底愛する黒鳥千代子という人間を“とっておきたい”と感じるのはいたって自然なんだ



「速水くん、別に褒めても何も出ませんよ」



俺の言葉をお世辞と受け取ったらしい彼女は俺にフワリと微笑みかける
その俺にとっては一種の芸術だとも呼べる表情を俺以外の誰かに見せているのかと思うとイライラする
たとえそれが彼女に迫るあの二人組でも、彼女の幼なじみでも
クラスにいる穏やかそうな女子に対してでさえも俺はその感情を抱いているんだ


――なんて勿体無いんだ
その表情を俺以外に見せても意味が無いのに
その美しさはきっと誰も理解できないのに
俺以外の誰にも、だ



「俺は本気だ」



本気で黒鳥のその笑顔が“欲しい”んだよ
この俺がどれだけ色んな本を読んでも分からない
どうやったら俺にそれを独り占めさせてくれる?



「……ウソばっかり」



「ホントだよ」



「だったら証明してみせて」



俺を試すような発言をした黒鳥の真意は分からない
だけど俺としてはこんな願ってもないチャンスをこのまま見過ごせるわけもない



「いいんだな」



念のためもう一度だけ確認をとると黒鳥は透き通るように白い頬を真っ赤に染めてコクンと頷いた


――ああもう、いちいちツボなんだって
綺麗な上に可愛いだなんて
ますます所有したいし閉じこめたくなる



「好きだ黒鳥
俺のモノになれよ」



耳元で甘く囁いた言葉が彼女に届いてるかは分からない
その言葉通り“俺のモノ”になる黒鳥を思い浮かべると酷く興奮する
この様子だとそんな日も案外遠くないのかもしれない



ああ、早く早く俺だけのものになってしまえばいいのに


心の底からそう思いながら彼女の唇に自分の唇を寄せた




閉じ込めたいくらい、好きなんだ





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