short3

□待って、まだ目を開けたくないの
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あたしの名前を呼んであたしを頼ってくれるのは信頼の証
そんな小さなことが嬉しくてたまらなくて
いつだってそれに応えてあげたくてムチャをして怒られたりもするけれど
こんな今が心地いいななんて幸せを感じてたんだ





「ギュービッド様っ」



ほら今日もあたしの可愛い可愛いへちゃむくれがあたしを呼んでいる
チョコはへちゃむくれだけど、それでもあたしの可愛い大事な弟子だ
チョコの話は八割方あたしにとってはどうでもいいことだけど、それを放っておけない優しさが彼女の良いところだろ
黒魔女らしからぬ、そんな優しさをあたしは大事にしたいし
チョコもそれを分かってくれている




「今日はどうしたんだよ」



「実は……、」



そう言って話しだしたのはチョコに付きまとう例の二人組の話
話を聞く限り迷惑そうにしてるけどあたしは気付いている
何だかんだ、あの二人のおかげで救われている部分もあるんだなって
素直じゃないし鈍感なチョコの事だから気付いてないだけかもしれないけど



いつか、いつかチョコはどちらかと恋に落ちて付き合ったりするのかと思うとなんだか寂しい
きっとその時なら娘を嫁に出す父親と分かり合えると思うんだけどなぁ




「どうしたんですか、ボーっとしたりして」



「いや、チョコのパパさんも大変だなって思ってさ」



「何言ってるんですか」



呆れたようでいて優しい表情を見せてくれるのは今はあたしだけの特権
いつかチョコが選んだ男にその笑顔を見せるであろう時がくるのだとは思う
それは明日かもしれないし、チョコが修行が終わるまでそんな日が来ることはないかもしれない
あたしはそれがひどく怖いことのように思えてたまらないんだ




「どうしたんですか」



急に黙り込んだあたしを見かねてチョコがあたしの顔をじっと覗き込む
そんなことは何度だってあったのに、急に恥ずかしくなってきて思わず顔を逸らした
その瞬間チョコの顔が傷付いたのが丸わかりな表情に変わる



「……何でもないぜ」



“何でも無いわけないじゃない”といつもなら突っ込みを入れてくれて、はいおしまいな場面で
なにも返ってこないことにこんなに不安を覚えるなんて思ってもみなかった



「……ズルいですよね、ホント」



「まあ黒魔女だしな」



気付いていてワザと話題を逸らしたあたしに非難の目を向けるチョコの目に色づいた感情を見つけたのはいつのことだったか


なあ、その感情は間違いだとはやく気付けよチョコ
それはあたしに向けるべきじゃないってチョコだって知ってるんだろう?
今ならあたしが気付かないフリすればすむんだから



あたしは今日も、可愛い弟子の良き保護者でないといけないんだ
チョコに名前を呼ばれるのはただ信頼されてるだけ
だから寂しいとかもっと応えてやりたいとか嬉しいとか思う気持ちはただの親心
それ以上でもそれ以下でもないと強く胸に言い聞かせた




知らないフリはいつまで続く?



(教えてだれか、)

(どうしたら分かってもらえるの?)




title*ねむりのよろこびのなかで


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