short3

□頼むからよそでやってくれ
1ページ/2ページ



教室に入るなり異様な雰囲気につつまれていて驚く
と同時に何だかいやな予感がしてなぜだか目を背けたくなる


一体どうしたのか聞きたくても何故かみんな顔がどんより曇っていて
いや、みんなと言えば語弊があるんだけど“みんな”と一括りにしてしまうことに差し支えはなさそうだ




一人顔を輝かせる大谷がきっとこの雰囲気の元凶なんだろう
僕はそっと自分の席に向かい荷物を置きどこか別の教室に避難することにした
このままだと大谷に捕まっちゃう
何があったのかは知らないけど、僕はみんなみたいになるのはゴメンだ



「あ、葉月!」



後少しで教室から出られるというところで大谷に声をかけられる
どうやら僕も捕まってしまったみたいで、
この大谷から逃げるのは多分至難の業だ



「聞いてくれよ!!」



「……どうしたの、」



みんなをこんな状態にした大谷の話が怖くて、つい身構えてしまう
とりあえず最終手段は“眠いから”と保健室に逃げ込むことだと算段をつけながらとりあえず先を促した



「伊集院がな、「ゴメン眠いから保健室行くよ」」



いきなり最終手段を使ってしまったけどそれも仕方ない
大谷の伊集院さんの話は長いんだ
しかも思う存分のろけてくるからこっちのダメージばっかり増える
できれば、いやむしろ何としてでもこのまま逃げ切りたい



「学校来たばっかりで保健室いくのかよ」



まさかの正論に言葉が詰まる
大谷に黙らされるなんて思ってもみなかった
この調子だと逃げられそうにない
じっとこちらを見て輝かせる瞳からはいやな予感しかしないけど
ここまで来て逃がしてくれるとは思えない



「どうしたのまたお弁当でも作ってもらったの」



そんなに親しくもないこの2人のお付き合いについて詳しくなってしまったのが悲しい
それもこれも大谷がところかまわずのろけるからなんだけど



「いや、昨日は伊集院から抱きついてくれたんだ!
あの時の顔すっげー可愛かったんだぜ」



「……ああ、そうなの」



「マジで天使だよなー伊集院
なんであんな可愛いんだろ」



「………」



「控えめだしなんていうかこう守りたくなるんだよな」



あえて僕は一ついいたい
頼むからそれを本人に言ってくれ
むしろエロエロトリオの本領を発揮して本音ぶちまけて思う存分伊集院さんに引かれてくればいいのに


そう思うくらいには大谷のノロケは精神的ダメージがでかい
何で恋人のいないクラスメイトたちにわざわざノロケるんだろ
もしかして嫌みなわけ?
恋人いるっていいよ的な?



「すいません、大谷くんいますか?」



いつも弱々しいと感じていた伊集院さんの声が今ほど頼もしかったことはない

今だけは大谷に賛同しよう
伊集院さんは間違いなく天使だ
いや女神と言っても過言じゃない
だから早く大谷をどこか別のところに連れていってよ




こっちのダメージがデカすぎます


(またみんなを困らせたんですか?)

(ち、ちげーよ!)

((………どこがだよ))





あとがき→
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ