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□止められる人はいませんか?
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「鬼は外なんだねぇ」

「福は内なんだねぇ」



今日は二月三日、節分の日です
松岡先生の悪ノリ……じゃなくて提案で五年一組は豆まき真っ最中です
どうやら前々から計画していたみたいできちんと人数分用意されていた豆を
みんなが好き勝手に撒いて遊んでます



こういう時必ずあたしに迫ってきて挙げ句の果てには二人で大喧嘩を始める麻倉くんと東海寺くんは今日は揃ってお休み
なんだかんだ仲良しだよねと思いつつ
あたしはひとりでまったりとめったに得られない平和を楽しんでいた



「鬼は外ーなんだねぇ」



「おい、大形
お前なにさっきから俺に豆ぶつけてるんだ」



は、速水くん!
こんなこと言ったらなんですけど
こういう場にいるのってすごく珍しいね



「速水の気のせいなんだねぇ」

「僕はちゃんと豆撒きしてただけだねぇ」



対する大形くんはいつも通り
ぬいぐるみさんとのお話真っ最中です



「大体お前俺のこと嫌いだろ」



「速水は誰かに好かれるタイプじゃないんだねぇ」

「孤独死まっしぐらなんだねぇ」



今日は2月にしては暖かいはずなのに
何故か大形くんと速水くんがいるところだけ極寒の地くらいに寒気がします



「余裕が無いんだな
まあぬいぐるみオタクだしな」



「その言葉そっくりお返しするんだねぇ」

「インチキオカルトマニアにはいわれたくないんだねぇ」



「どういう意味だよ」



「自覚してないのはキツいんだねぇ」



目には見えないけれど確実に大形くんと速水くんの間には火花が散っています
さっきまで自由に遊んでたみんなも遠巻きに見てるし


でも大形くんと速水くんってこんなに仲悪かったっけ?
あたしだって人のこと言えないけど、二人ともクラスでは浮いてるし
人間関係自体があんまりないから嫌いとかそういうのも無いんだって思ってたけど違うんだね
やっぱり人間関係って難しいです



「黒鳥さんどうにかしなさいよ」



「えっ、あたし!?」



舞ちゃんの突然の指名に思わず聞き返してしまう
なんでいきなりあたしなの?
関係ないあたしが入っちゃったらむしろ迷惑なんじゃないかな?



「むしろ黒鳥さん以外誰が止めれるのよ」



舞ちゃんが言ったら一発だと思いますが
なんてことは言えず



「あのぉー」



本当に聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声で話しかけると二人が一気にこちらを振り返って驚く



「そうだ、黒鳥言ってやってくれよ
ぬいぐるみオタクなんてあり得ないってさ」



いや大形くんのそのぬいぐるみは魔界の平和のために必要なんです……ってそうじゃなくて!
どうしたの速水くんってば
いつもと全然違うよ!?



「黒鳥さんは僕の味方なんだねぇ」

「約束もしてくれたしねぇ」



約束って何の!?
全然身に覚えがないんですが
大形くんも一体どうしちゃったのよ



ていうかこの展開、五月くらいにもあったような……




「黒鳥、」


「黒鳥さん」



ジィッと見つめられて思わず後ずさり
や、ヤバいです
もう後ろには壁が………



「どっちがいいんだよ」



「選んでほしいんだねぇ」



ちょ、ちょっと待ってよ
訳わかんない!
大体何と何をあたしは選べばいいんですか
助けを求めて周りを見渡しても誰も目を合わせてくれず



正直今だけ、本当に今だけは
麻倉くんと東海寺くんがいてくれたら良かったのになんて思ってみたりもします




ぷりーずへるぷみー!!

(スクープよ!!)

(桜都さん待って、
これからが面白い所なんだから)






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