short3

□あなたが僕の全て
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気がついたのは中学生になったころ
ぐんぐん背が伸びていく響也くんを見上げて
女の子にもて始めたことに得体のしれないモヤモヤを感じて


百合に相談するとあっさりそれは恋だと言われた
そう言われてみると納得いくくらいには
あたしは響也くんへの好意を自覚していて
気がつけば自分でも怖いくらい気持ちは大きくなっていた



その時以来、毎年この時期にあたしは響也くんにチョコレートを作っている
だけど一度として渡せたことはない


初めの年はあたしの変なプライドがジャマをして
二年目は“去年あげなかったのに……”と余計なことを考えて
三年目からはもはや抜け出せない悪循環にハマっていた


それに響也くんは絶対にチョコを断らない
だから結果的に大量のチョコを貰うことになる

その多くが響也くんにあたしと同じように好意を抱く女子からのもので
ワガママな話あたしのチョコをその中に紛れさせたくて
結局渡せずに自分で食べるチョコレートはいつだって虚しさしかなかった


それでも渡せないと分かっていても作ってしまうのは今年こそという淡い希望が捨てきれないから
打ち砕かれると分かっているのに
この季節になるとどうしても夢見てしまう



「荷物持ちますよ」



響也くんはあたしに対してとっても紳士だし優しいけれど
その優しさがつらい



「……そんなにあるならいらないわよね」



響也くんに聞かれないようにボソッと呟く
自分でも渡さない言い訳にしか聞こえなくてちょっと虚しい
ああ、今年も渡せないまま
何もないままこの日が終わるのかしら



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