short3

□気付かぬうちに
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「おっ、日向くんじゃないか!」



教室でひとり残っていると鈴風さんが入ってきた
すでに部活のジャージ姿なところを見ると忘れ物を取りに来たみたいだ



「どうしたんだ?
早くしないと部活遅れるぞ?」



そうしたいのは山々なんだけど
ていうか学校に来る理由はそれ以外ほとんどないけどな



「これやらないと次の大会出られないらしいんだ」



「つまり居残りって訳だな」



「鈴風さん、先生に伝えといてもらえないか?」



「もちろんいいさ!」



多分顧問の先生には伝わってると思うんだけど一応念のためだ
サボったと思われて大会に出られないとか最悪すぎる
まあそもそもこの課題はうちの部の副顧問が出したから
知らないはずないんだけどな



「ていうかよっぽどだったんだな
普通課外とか追試だろ?」



「課外もうけたし追試もしたんだけどな
何でか先生に泣かれたぞ」



「………よっぽどだったんだな」



全く、俺の方が泣きたかったよ
ちゃんと課外も追試もしたのにまだ解放されないのか
早くグラウンドにいって走りたいのに



「ちなみに何やってるんだ?」



鈴風さんが覗き込んだプリントの上にはでっかく“日向用数学プリント方程式編”の文字が書かれていて
それをみて鈴風さんは何故か黙り込む



「今正と負の数編おわったところなんだ!
この調子でがんばるぞ!」



「………そっか」



何で鈴風さんが遠い目をしてるんだろう
よく先生が俺に成績の話をするときもこんな目をしてるんだけど
もしかして今流行ってるのか?


なんて考えているとプリントの上にラッピングされた可愛らしい袋が置かれた



「どうしたんだ鈴風さん?」



「ほら、甘いもの食べると頭働くっていうだろ?」



なるほど糖分補給ってわけか
働いた後には糖分補給ってのはスポーツでも勉強でも一緒なんだな
だけど何でラッピングされているんだ?



「そりゃたまたまだよ」



「そっかたまたまか
ありがとうな鈴風さん!」



「いやいや
早く課題終わるといいな!」



そう言って教室を出て行った鈴風さんを見ていると何だか無性に走りたくなってきた
よし、さっさと課題終わらせて思う存分走ってこようと心に決めて再び課題に取りかかった



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