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□臆病者たちの色恋模様
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何だろうこの状況
思わず溜息が漏れそうなくらいにはあたしは困惑してるみたい
目の前には顔を真っ赤にした麻倉くん
それ自体はめずらしくも何ともない
あたしの前では麻倉くんは面白いくらい純情だから
「く、黒鳥……」
でも最近は輪を欠けて変
あたしの名字を呼ぶのですら言葉に詰まるようになっている
前までは普通に呼べてたはずなのに、急にどうしちゃったんだろ?
「こ、今度の休みなんだけど、」
「うん、」
「……や、やっぱりいいよ」
ほら今だって
何か言いかけたかと思えば“やっぱりいいよ”って
全然いつもの麻倉くんらしくない
何か変なものでも食べたとか?
……なんて、本当は気付いてる
こんな風に麻倉くんのこと気にしちゃってるあたしの方こそ変だ
例えば東海寺くんの様子がおかしかったとしても多分ここまでは気にならない
ちょっと冷たいけど“これで静かになるなー”くらいにしか感じないんじゃないかな
いつの間にかあたしの中での麻倉くんの存在が大きくなってきたことに気がついたのはいつだっただろう
グイグイ迫ってくるくせにあたしと目が合うとパッと逸らす
そんな麻倉くんがいつの間にか微笑ましく思えてた
この気持ちはきっと特別なモノ
だけどそれが麻倉くんの持つものと同じものなのかあたしにはイマイチ確信できない
もし違ってたら麻倉くんにも申し訳がなさすぎる
曖昧な感情は他人を傷つけるだけだから
だからこそ確かめたいのに、肝心の麻倉くんがこの様子じゃなぁ……とあたしは本日二度目の大きな溜息をついた
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