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□お手をどうぞ
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何もないハズの休日が急に忙しなく動き出す
全ては僕の敬愛するあの人の言葉から始まった



「出雲くん、買い物に付き合ってくれないかしら」



よくよく聞くと今度クラスでの活動に必要なものを買いに行くそうで
正直そういうのって松岡先生の仕事だとは思うのですが
僕はそれよりも一路さんとお出かけできることの方がよっぽど大事なので何も言いません
松岡先生、仕事してませんけどグッジョブです


思えばこういう買い物といえば一路さんに頼まれて僕1人が買いに行くのがいつものパターンですから
今回何から何まで僕はツイているようです
きっと一路さんの気まぐれでしょうがそれでも構いません
僕はしっかり自分の役目を果たすのみです




ドキドキしながら一週間を過ごし
ついに一路さんと約束したあの日がやってきました
大荷物にならないとも限りませんので
動きやすい、それでいて一路さんの隣を歩くのに相応しい格好を必死で悩んだ末に今日の日を迎えました


10時の待ち合わせに遅れまいと早めに家を出た結果
30分も早く待ち合わせ場所についてしまいました
一路さんも待ち合わせには早めに来るタイプですのでもう少ししたらいらっしゃるでしょうと近くの時計を見上げた時でした



「ねえ君、1人かい?」



声のした方を見ると中学生くらいの男の人が数人こちらの方によってきています
服装や立ち振る舞いを見る限りあまり素行のいい方たちではないようです
そういう方々が僕に声を掛ける理由はそう多くありません



「何でしょうか」



「男の子なんだ、君」


「てっきり女の子かとおもったよ」



髪形を見る限り、僕を女の子なんて思うはずないのに
見え透いた嘘の影にチラついているのは彼らの真意
その証拠に少しずつ僕を取り囲んで周りの大人たちの目から遠ざけようとしています



しかし困りました
これが同じ小学生なら何とかなるかもしれないのですが
相手は中学生です
どちらかといえば小柄な僕とは体格差がありすぎます
ここは今のうちに大声を出しておくべきでしょうか




「あら、響也くん何をしているの?」



耳に入ってきた声は僕が焦がれてならないあの人のもので
こんなに囲まれているのに一路さんは僕がいることが分かったのかと今の状況とは全く関係ないことが頭に浮かんだ




「こいつ、このガキの彼女か?」



「どう見ても小学生のくせにませてるねー」



「つーかあの彼女の方が金持ってそうじゃね」



一路さんの服装はいつもの様なワンピース
見ようによってはお金持ちのお嬢様にみえるだろう(事実そうですし)
彼らの目標が一路さんに変わったことはある意味必然
だけど僕はホッとしていた


だってあの一路さんが何の案もなく危ない場面に首を突っ込むわけがないのですから




「聞いてたかしらマリアちゃん」



「ハイ、バッチリデス!」



そう言って微笑んだクラスメイトは何より力強い味方だった



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