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□上がる温度
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下でチャイムが鳴る音がして
若い衆が応対している声が聞こえる
――黒鳥だったらいいな
最近家でチャイムの音を聞く度にそう思ってしまう俺は多分かなり重症だ
まあただ思うだけで実際にくるわけないって知ってはいるのだけど
階段を上がる音が聞こえる
若い衆と誰かがはなす声
誰が来たんだろう?
もしかして若い衆が心配しすぎて医者でも呼んだんだろうか
「坊ちゃんお客様ですよ」
そんな声と共に開いた扉の向こうを見て驚いた
「く、黒鳥っ!?」
え、ちょっと待てよ
何でいるんだよ
いや別にいてもいいっていうかいつもなら大歓迎だけどさ
てか俺今めちゃくちゃ部屋着だし
髪もいつもの比じゃないくらいボサボサだし
「黒鳥さんごゆっくり」
「いやすぐ帰ります
良子ちゃんいたら大変ですし」
「大丈夫ですよ
お嬢には内緒にしときますし
お嬢はいつも遠回りして帰ってくるんで」
そういうと若い衆は扉を閉めてどこかへ行ってしまった
てかお前すごくナイスだよ
これ以上ないってくらい気が利いてたよ
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