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□愛しのあの子をつれもどせ
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「だいたい何でお前あの時いなかったの
麻倉なら紫苑もあんな風に言わなかったのにさ」



今朝教室でメグにいわれた事を引きずる東海寺は麻倉に八つ当たりする



「事実だろ」



「そりゃまあそうだけどさ」



麻倉の言葉が語るように他二人の前には料理が置かれているのに東海寺の前にはオレンジジュースのみ
最初はなにも頼もうとしなかった東海寺だがそれは余りにも店側に失礼だろうと麻倉が勝手に注文したのである



「なんでここ、こんなにも高いの
俺の晩飯代なくなったよ」



「東海寺、分かったから話を先に進めよう」



大形のその言葉で本来の目的を思い出した二人は真剣な顔に戻る



「いいかい
僕たちの目的は黒鳥さんをあの場から連れ戻すこと
但し僕たちがいるってバレないようにね」



付いて来たってバレたら益々彼女にウザがられかねないという三人の共通認識である



「にしても相手の奴ら遅いな」



「黒鳥さんを待たせるとはいい度胸してるよ」



そういって微笑んだ大形の笑みはぞっとするほど冷たく
東海寺は思わず身震いしたが
この状況はこちら側にとっては有利である
相手が来る前なら帰ってしまっても問題ないからだ




「よし!じゃあ俺からやってみるよ」



そういって東海寺は携帯電話を取り出した
電話をかけて説得する作戦である



「大丈夫かよ東海寺」



「心配ないよ!
俺この三人の中なら甘え上手な方だから!」



「そうじゃなくて着信拒否されてないか」



「んなわけないだろ
大体俺そんなに電話かけてないよ
電話料金って高いんだからな!」



当たり前のように言った東海寺と自分の家の経済格差を改めて感じる麻倉を尻目に電話をかけ始める東海寺
だがだんだんその顔が曇っていく



「……出ない」



「おいまさかほんとに着信拒否されてるんじゃ」



「でもそれなら通話中になるんじゃないのかい?」



それもそうだと納得し理由を考えていると意外なところから答えは出た





「えぇっ!?
チョコケータイ忘れてきたの!?」



店内に響くほど大きなメグの声に納得する三人
そりゃいくらかけても出ないわけである



「メグ声が大きいです」



千代子がそう諫めたためその後の会話は聞こえづらくなったのだが
一つ確実なことは




「東海寺の作戦は失敗だね」



「くっ……俺にはなにもできないのか」



「東海寺、まあ食って元気出せよ」



「麻倉………」



「すいませーんこの店で一番高い料理くださーい」



「なんなの麻倉
俺んちを破産させる気なの」





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